【司法書士解説】遺産相続で横領?使い込み?相続人や専門家のケース

遺産相続で横領!?

この記事を要約すると

  • 遺産の相続人やその配偶者が財産の使い込みをすると横領罪や窃盗罪が成立することがある 
  • 使い込みをした者によっては、親族相盗例という特例により刑が免除される場合がある
  • 親族相盗例が適用されない場合もあり、後見人として横領を行った場合には業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)が適用される
  •  相続人やその関係者が使い込みをした財産の返還請求や損害賠償請求については専門家に相談することが必要

相続の専門家も信頼するのはNG?

実際にあった事件として、遺産相続の手続きのために依頼者から預かっていた現金を、自身のFXや暗号資産などへの投資につぎこむために着服したとして、元司法書士が業務上横領の罪で逮捕・起訴された事件がとりあげられました。

警察の取り調べによると、その後の捜査結果でこの男性は数件の相続手続きにおいて預かり金の着服を繰り返しており、被害額はおよそ1億6300万円にのぼるということです。

これは、遺産相続において司法書士が依頼を受けたお客様から相続財産を着服したケースですが、遺産相続の専門家と言っても100%信頼できるわけではないことがわかります。

また、相続人においても簡単に信頼できるわけではなく、相続人が遺産の使い込みをしてしまった場合に、そもそも横領罪になるのか?そうでないならどういったケースが横領罪にあたるのか?といった点についてこれから解説していきたいと思います。

 

遺産相続で使い込みがあったら横領罪になる?

まず、横領罪について少し説明をしたいと思います。

横領罪とは、自己の占有する他人の物を横領した場合に成立する犯罪です。刑法252条において、5年以下の懲役に処する、と規定されています。

遺産の使い込みは、被相続人(死亡した人)と同居していた相続人や財産の管理をしていた相続人などが被相続人の遺産を勝手に自分のものにしてしまうことをさします。

この時、自分のためにお金を使ってしまうことだけでなく、不動産などを勝手に処分してしまうことも使い込みの一種となります。

もっとも、被相続人に許可を得て自分たちのために使っていた場合には被相続人の同意があるため横領にはなりません。

その他具体的には預貯金の使いこみ、生命保険の解約、株式取引などがあります。

その中でも1番多い例として、預貯金の使い込みがあります。被相続人である親と同居していた長男夫婦が、親名義の預貯金口座から毎月○十万円ずつ出金してその分を自分たちのものにしてしまうケースなどがそれにあたります。

生命保険の解約による使い込みの場合には、親が加入している生命保険を勝手に解約して解約返戻金を受け取るパターンなどがあります。

これらの使い込みですが、このようなことが起こることでどのような問題が起きるでしょうか?

この使い込みにより本来相続人が相続されるべき遺産額が減ってしまうことが1番の問題になってきます。本来、遺産分割の相続が開始されると相続人全員による遺産分割協議が行われます。

生前に被相続人の遺産が使い込まれてしまった場合、相続対象の遺産が減ってしまい相続人らが損害を受けてしまいます。また、そのことにより争いが起きるケースが後を絶ちません。

ではもう少し具体的にみていきましょう。

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相続の場面で横領にあたるケースは?

大きく分けて、相続人が横領するケースと、相続人以外の第三者が横領するケース2つあります。

相続人が横領するケース

被相続人の生前に、無断で預金が使い込まれていた、という場合です。これが最多と言われており、次に不動産や株式の売却、生命保険の解約返戻金、賃料の横領があります。

不動産や株式の売却においては、被相続人が保有していた不動産や株式について被相続人の許可なしに勝手に売却してしまうケースです。

最近では、インターネットを経由して株式の売却や引き出しなどを簡単に行うことも増えています。そのため、被相続人に無断で株式を売却しその後の売却金を使い込んでしまうケースが増えていると言われています。

生命保険に生前加入している人の割合が多いため、被相続人の同居人が許可なく解約してしまいその解約返戻金を使い込んでしまうケースが少なくありません。

誰にでもあるわけではありませんが、被相続人が不動産を保有していることで賃料の収入があるという場合もあります。この場合に、発生する賃料を特定の子供や兄弟姉妹が受け取って使い込んでしまうケースも実際にあることを覚えておきましょう。

賃料の収入受け取り口座について、被相続人以外が管理している場合は特に注意が必要です。

相続人以外の第三者が横領するケース

相続する財産や遺産について使い込みを行う可能性があるのは相続人以外にもあり得ることを知っておきましょう。

生前、被相続人の介護を何らかの理由により行っていた人物が被相続人と関係性を築くことで被相続人の財産の管理を任され、預金を勝手に引き出し使い込んでいたというケースも実際にはあります。

被相続人の了承を得ず勝手に引き出されているとしたら当然ながら犯罪にあたります。相続財産や預金の管理を相続人以外が担っている場合には、十分に注意しましょう。

 

横領罪が成立しても親族相盗例が適用されることも!

親族相盗例とは、一定の親族間で特定の罪を犯した場合にその人の刑を免除したり被害者等からの告訴がなければ起訴できないこととする特例のことを指します。

窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、背任罪など財産に対する罪の一部につき定められており、家庭内のことにむやみに国家機関が介入するよりも親族間で解決させる方が良いという「法は家庭に入らず」の考え方からきています。

親族相盗例が適用されるケースは、「配偶者」「直系血族」「同居の親族」になります。また、この場合の「配偶者」についてですが内縁関係にある者は含まれません。

「直系血族」については、基本的に血のつながりがある人ということになりますが親、実子、祖父母、孫といった自然血族の他、養親や養子といった法定血族も含まれます。「同居の親族」にあたっては、同一住居内で共同で日常生活を送っている親族を指します。

この場合、姻族と言って配偶者の側の血族も含まれることになります。

先ほどの例のように、被相続人の預金口座通帳を長男が管理しており被相続人の許可なく無断で引き出し使い込んでしまった場合、長男には横領罪が適用されますが被相続人の直系血族に当たるため親族相盗例が当然に免除されるわけではありません。

親族相盗例が適用されないケースとは?

親族である後見人が被後見人の財産を横領した場合には、親族である場合も刑罰に問われます。これは家庭裁判所から選任された成年後見人は公的性格を有するものであり、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理するべき法律上の義務を負っているとするためです。

成年後見人が業務上、占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合には成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があったとしても、刑法上の処罰を免除することができないということです。

また、後見人が横領を行った場合は横領罪には当たらず、横領罪よりもより重い罪にあたる業務上横領罪(刑法253条、10年以下の懲役)が適用されます。

そのほか、一人ではなく共犯者がいる場合や内縁の配偶者の場合も、親族相盗例が適用されません。遺産の使い込みに関して直系親族一人ではなく共犯者がいて、共犯者が直系血族でなく友人などの場合は、直系血族の人物は親族相盗例の適用となっても共犯者にはそれが適用されません。

内縁の配偶者の場合は、法律上の婚姻関係にあるわけではないため「法は家庭に入らず」の考え方は適用されず、刑の免除の対象とはならないのです。

 

まとめ 

遺産相続においては、遺産整理にあたるプロが相続金を着服するケースもある他、相続人の使い込みにより本来相続されるべき遺産額が減ってしまい相続人間で争いが起きるケースも少なくありません。

その場合、相続人において親族相盗例が適用されるケースがありますが、中には親族であっても適用されないケースもあります。

また、親族相盗例が適用される場合であってもあくまでも刑事責任における話であって民事責任まで免れるわけではありません。

刑事上の刑が免除されても、使い込んだ相続財産の返還を求められることは簡単に想像ができます。この場合には、民事裁判で訴えられる可能性もあります。

相続人や相続人の関係者が遺産の使い込みをして困っている場合に、横領を証明することは簡単ではありませんがどういった解決方法があるのか?泣き寝入りするしかないのか?など解決方法について、専門家に相談することが必要です。

一人で悩むのではなく、専門家のアドバイスを聞いた上で解決策を考えていくのが良いでしょう。

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この記事の監修者

“横浜市内の相続代行の相談を受ける司法書士”

あいりん司法書士事務所    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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