この記事を要約すると
- 遺産分割協議書とは、相続人全員の合意に基づいて作成する書類であり、遺産の分割内容を明確にするために重要である。
- 遺産分割協議書を作成するには、被相続人や相続人の情報、相続財産の種類や内容、後から見つかった財産の取扱いなどを記載する必要がある。
- 遺産分割協議書は、相続税の申告や財産の名義変更などの手続きに必要である。
遺産分割協議書は、相続人が遺産を分ける際に必要な書類です。
「作成には専門家に頼む必要があるのでは?」と思う方も多いと思いますが、実は自分でも作成することができます。
本記事では、自分で遺産分割協議書を作成する方法を解説します。作成のポイントや注意点、活用方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
遺産分割協議書とは
法的に作成義務はないが、遺産分割に必要な書類
遺産分割協議書は、法律で作成する義務はありませんが、遺産を分ける際のトラブルを防ぐためには非常に役立つ書類です。
例えば、相続人間での意見が分かれた場合や、後から遺産の分け方に不満を持つ相続人が出てきた場合、この書類があれば、当初の合意内容を明確に示すことができます。
また、不動産の名義変更や銀行口座の解約など、実際の手続きをスムーズに進めるためにも、この書類が必要となります。
相続開始から遺産分割協議書作成までの流れ
1.相続人調査と相続財産調査をする
相続人は誰か、相続財産は何かを正確に把握するために、戸籍謄本や住民票、預貯金通帳や不動産登記簿などを集めます。
2.遺産分割協議を行う
相続人同士で話し合って、誰がどの財産を相続するかを決めます。合意できない場合は遺産分割協議書を作成できないため、調停、それでも難しい場合は裁判という流れになります。
3.遺産分割協議書を作成する
協議の結果を文書にまとめて、相続人全員が署名押印します。遺産分割協議書には、被相続人や相続人の情報や遺産の内容、後から見つかった財産の取り扱いなどを記載します。
遺産分割協議書はいつまでに作成すべきか
遺産分割協議書の作成には、特定の期限は設けられていません。しかし、早めに作成することで、将来的なトラブルを避けることができます。
特に、相続人間での意見が一致している場合や、遺産の内容が複雑でない場合は、早めに書類を作成することをおすすめします。
遺産の分割が決まったら、できるだけ早く書類を作成し、全ての相続人に確認してもらうことが大切です。
遺産分割協議書を自分で書くポイント
遺産分割協議書は、相続人間での財産の分配を明確にするための大切な書類です。しかし、専門家に頼むことなく自分で書くことも可能です。以下に、その際のポイントをわかりやすく解説します。
1.手書き・パソコンどちらでもOK
手書きでなくても、パソコンを使って作成しても問題ありません。ただし、文字がはっきりと読めることを確認しましょう。また、保存の際は紙に印刷して保管することをおすすめします。
パソコンを使う場合は、A4サイズの用紙に印刷してください。 パソコンで作成すると、文字が読みやすく、修正も容易です。
2.作成日付を入れる
協議書には、作成した日付を明記します。日付は相続人が署名押印した日を記入しましょう。
3.相続人を明らかにする
相続人の氏名や住所、続柄を明記します。これにより、誰が相続する権利を持っているのかが明確になります。
遺産分割協議書の作成者は相続人全員です。相続人の氏名と続柄を正確に記載します。
例えば、「妻 田中正子」、「長男 田中一郎」などとします。相続人の数や関係がわかるようにしましょう。
4.亡くなった人(被相続人)の情報も記載
被相続人の氏名、死亡日、最後の住所、本籍地などを記載します。
被相続人の氏名や住所、最後にどこに住んでいたか、いつ亡くなったのか、本籍はどこかなどを明確にすることで、遺産分割協議書の有効性が高まります。
遺産分割協議書では、誰の遺産を分けるのかも明記します。
5.誰がどの財産を相続するのか明確にする
遺産分割協議書の主な目的は、相続財産の取得者と取得内容を明らかにすることです。具体的な財産の内容や相続する相続人を明記します。これにより、後でトラブルが起きることを防ぐことができます。
相続財産は、種類や特性に応じて詳細に特定し、それぞれ誰がどれだけ相続するかを記載します。
例えば、不動産の場合は所在地、地番、土地面積、建物構造などを記載し、預貯金や株式の場合は金融機関名、口座番号、株式数などを記載します。
債務や負債も遺産分割協議書の対象です。 借金やローンなどは誰が返済するかも明記します。
6.生命保険金や死亡退職金は記載不要
生命保険金や死亡退職金は、受取人固有の財産として扱われます。これらは相続財産ではないため、遺産分割協議書に記載する必要はありません。
7.後で発見された遺産の取扱いも明らかにしておく
遺産分割協議書を作成した後に、新たに遺産が発見されることがあります。協議書作成後に新たな遺産が発見された場合の取扱いを、事前に記載しておくと安心です。
後で発見された遺産は、相続財産に含まれるため、遺産分割協議書に記載しておくことが望ましいです。
そのような場合に備えて、遺産分割協議書には後から見つかった遺産の取扱いについても記載しておきましょう。
例えば、「後から見つかった遺産は妻田中正子が相続する」とするなど、事前に合意しておくとトラブルを防げます。
8.相続人全員が実印で署名押印する
遺産分割協議書は相続人全員の合意によって作成される書類です。そのため、相続人全員が署名と実印を押す必要があります。
実印は本人の意思表示を証明する重要な印鑑です。 一人でも欠けると、遺産分割協議書の効力が失われます。
9.人数分を用意する
遺産分割協議書が完成したら、相続人が各自1通ずつ所持します。この書類は相続税の申告や名義変更などの手続きに必要です。パソコンで作成した場合は、人数分の部数を印刷しましょう。
10.複数ページにわたる場合、契印する
遺産分割協議書が複数ページに及ぶ場合には、ページの間に契印や割印をするとよいでしょう。契印とは、契約や約束を確認するために、契約書や文書に押す印章のことです。
割印とは、原本を複製するなど同様の内容の書類が2部以上になる場合、それらの整合性があることを示すための押印です。
これは、後からページを入れ替えたり増やしたり減らしたりしないことを示すためです。契印も相続人全員が実印で行いましょう。
遺産分割協議書の活用方法
遺産分割協議書は、相続人が遺産の分け方について合意したときに作成する書類です。この書類は、相続税の申告や財産の名義変更などの手続きに必要になります。
以下に、遺産分割協議書を活用する方法を紹介します。
相続税の申告
相続税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告しなければなりません。
相続税の計算は、遺産分割協議の結果によって変わることがあります。そのため、遺産分割協議書を添付して、相続財産の内容や分配方法を税務署に示す必要があります。
不動産の名義変更
不動産を相続した場合は、法務局で相続登記(名義変更)を行わなければなりません。相続登記をするためには、遺産分割協議書や戸籍謄本などの必要書類を揃えて申請します。
預貯金の名義変更、解約払戻し
預貯金も相続の対象となります。預貯金を相続した場合は、預け先の金融機関に遺産分割協議書を持参して、名義変更や解約払い戻しを行います。
銀行や信用金庫での名義変更や解約払戻しを行う際、遺産分割協議書を持参することで、手続きが迅速に進行します。特に、多種類預貯金がある場合、この協議書がないと手続きが難しくなることもあります。
金融機関ごとに必要書類や手数料が異なるので、事前に問い合わせておくとよいでしょう。
株式の名義変更
株式を相続した場合は、遺産分割協議書を使って株式の名義変更を行います。まずは相続人名義の証券口座を開設し、そこに名義変更した株式を預け入れます。
証券会社ごとに必要書類や手数料が異なるので、事前に問い合わせておくとよいでしょう。非上場株式の場合は、株式発行会社に問い合わせて手続きを行います。
車の名義変更
車を相続した場合は、管轄の運輸支局で車検証や遺産分割協議書などの必要書類を提出して、車の名義変更を行います。
軽自動車の場合は、軽自動車検査協会が窓口となります。
まとめ
この記事では遺産分割協議書を自分で作成する際の注意点や活用方法などを解説しました。遺産分割協議書とは、相続人間で遺産の分け方について合意した際に作成する書類です。
遺産分割協議書を作成するメリットは、以下のとおりです。
- 相続人間のトラブルを防ぐ
- 相続税の申告や財産の名義変更などの手続きをスムーズに行う
遺産分割協議書を作成する際には、以下の点に注意が必要です。
- 作成日付を記載する
- 被相続人の情報を記載する
- 相続人を明らかにする
- 誰がどの財産を相続するのか明確にする
- 後で発見された遺産の取扱いについても明らかにする
- 相続人全員が実印で署名押印する
- 複数ページにわたる場合、契印する
- 人数分を用意する
遺産分割協議書は、相続税の申告や財産の名義変更などの手続きに必要です。相続が発生した場合は、早めに遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成しておきましょう。
なお、遺言書がある場合は、遺言書に従って遺産を分割するのが原則です。
この記事の監修者
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