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父が亡くなって一か月後に母が亡くなりました。父の遺産分割もしていないケース
父が亡くなり、母がすぐに亡くなった時、いまだ父の遺産分割が終了していない場合、父の遺産分割はどのようにすればいいのでしょうか。父の相続に関して、父が亡くなった時は母はまだ生きていましたので、私と妹と母が法定相続人でした。その場合、母が2分の1、残りが私と妹で4分の1で相続することになります。(一次相続)
その後、母が亡くなった場合、母は父から相続した相続財産と別途母固有の財産がありますので、私は母の相続財産をすべて相続します。この時私と妹が母の相続財産を2分の1ずつ相続します。(二次相続)なので母の遺産分割も必要になります。
一次相続と二次相続では相続人の範囲が違いますので、一次相続では母、私、妹で遺産分割をし、二次相続では私と妹が遺産分割を行います。なお遺産分割協議書にはどの程度具体的に記載しておくべきか、こちらで明らかにしておきます。土地であれば所在地番地目が必要であり、地積の記載がないものであっても法務局には受理されます。建物であれば所在、家屋番号、種類、構造などの記載があり、登記記録との同一性が確認できるものであれば床面積の記載がないものであっても受理されます(登記研究568)
1人遺産分割について
上記事例で、父が亡くなり、母が亡くなって、私一人が相続人だった場合はどうでしょうか?私自身は父の直接の相続人であり、また、母の相続人でもあります。相続登記では遺産分割協議書を添付しますが、私一人のみによって作った遺産分割協議書を添付して私名義に直接相続登記ができるのでしょうか?
結論、東京地方裁判所平成26年の判決により明確にNOが出されました。どのように登記するかというと、①父から亡母、私に対する法定相続による相続登記②亡母から私に対する法定相続による相続登記の2件ということになります。
相続人全員で遺産分割協議をすべきか。
共同相続人の一部の者を除いて遺産分割協議をした場合、その遺産分割の効力はどうなるか。遺産分割協議はすべての相続人が集まって、その全員の同意を得ることで成立します。(民法907条)仮に相続人ABCのうちAを除いてまとめた遺産分割協議はすべて無効になります。この場合、AだけではなくBCも再分割の協議や調停、審判をすることができます。
同様に相続人ABCのうち、BCのみで成立した遺産分割協議によって作成された遺産分割協議書を添付してされた相続登記の申請は受理されません。また相続人ABCのほかに相続分をと越える特別受益を得たものがある場合には、その者を除いて遺産分割協議をすることができます。(登記研究114)
遺産分割協議の当事者の一人に胎児を含めることができるか
胎児を含めて遺産分割協議ができるのでしょうか。胎児については民法上、相続に関して言えば既に生まれたものみなすことになっています。(民法886条)ですが、「胎児の出生前については、相続関係が未確定状態となり、胎児のために遺産分割をすることはできないとされています(昭和29・6・15民甲)
親権者Aとその未成年の子Bが遺産分割協議をするとなると、そのこと自体利益相反行為になるのでしょうか。
共同相続人間の利益相反の問題です。利益相反にあたる遺産分割協議をする際は、Bのために特別代理人を選任する必要があります。(民法826条)仮に協議の結果、親権者が相続財産を受けない場合でも、特別代理人の選任は必要です。ちなみに共同相続人である親権者は未成年者Bが特別受益者である旨の証明書を作ることができます。
不在者財産管理人は遺産分割協議に参加することができるのでしょうか
不在者財産管理人をもって遺産分割協議に参加するためには、不在者財産管理人の選任を受け、不在者財産管理人の権限外行為の許可を得、ほかの共同相続人に交じり遺産分割協意義にさんかすることができます。(昭和39年・8・7)
相続登記に添付する遺産分割協議書には、全員分の個人の実印の押印と印鑑証明書の添付が必要か
遺産分割協議を添付して相続登記を申請する場合、協議書の記名押印者全員の印鑑証明書が必要になります。厳密にいえば申請人の個人の実印と印鑑証明書は不要ですが、登記実務では、慣習的にすべての相続人のものをつけています。また相続人ABCで遺産分割協議の結果、甲不動産をA(3分の1)とB(3分の2)の共有となった場合、相続による所有権移転登記申請は、共有者の一人からすることができます。(登記研究553)
この申請には当然にほかの共同相続人全員の印鑑証明書を添付することになります。また共同相続人3人中、1人は特別受益証明書を添付し、ほかの2人で遺産分割協議をしたとする相続登記の申請は受理されるのでしょうか。この場合、特別受益証明書と遺産分割協議書を添付した相続登記は法務局に受理されます。なお、特別受益証明書と遺産分割協議書には印鑑証明書を添付しなければいけません。(昭和30年4月23日民甲742)