介護する人にとって、誰かに相談したり、協力してもらうことはとても重要です。困りごとは様々あり、その内容によって相談先は変わってきます。
介護全般では介護士やケアマネージャーが相談に乗ってくれますが、終末期における法律問題となると相続税の問題では税理士、相続・遺言などの場合は弁護士などに相談することになります。その中で、司法書士とのつながりもとても重要です。認知症になった際の成年後見制度が関りとしては一番多くなりますが、どんな場面で必要となるのかをよく確認しておきましょう。
介護をする際に繋がりのある人とは?
介護は自分一人だけで続けられるものではありません。症状や状態が重くなるにつれ、家族や身近な人を中心に、関わる人が多くなってきます。介護士やケアマネージャーだけでなく、生活全般を考えるとお金の問題や様々な手続きなど、法的な問題も出てきます。
どんな時にどんな人に相談をすればいいのかを整理していきましょう。
家族など身近な人
介護を受けている方の一番近くにいるのは、家族や身近な人が多いでしょう。一番の理解者でもあり、協力者でもありますが、距離が近すぎるとうまくいかないことも多くなります。一人で抱え込んでしまうケースも多くあるため、必要なことを専門の人に相談、協力してもらえる環境作りをしましょう。
主な専門職
多く関りがあるのは、医療、介護の専門職になりますが、困りごとの内容によっては、行政の職員だったり、弁護士、税理士、司法書士といった、法律の専門家に相談するようなこともあります。具体的にどのような専門職がどんな相談に乗ってくれるのかを知っておきましょう。
医療、福祉系の専門職
医師 | かかりつけの主治医、訪問の医師など診察や治療をします。 |
看護師 | 通院時や訪問看護、介護施設の看護師など処置や薬の管理などをします。 |
各リハビリの専門職 | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など介護施設や病院でのリハビリ、自宅での訪問リハビリをします。 |
相談員 | 病院の医療相談員、入退院の調整や在宅復帰への各調整をします。 |
介護系専門職
介護士 | 訪問介護員や施設の介護福祉士など介護施設での介護業務全般、自宅へ訪問しての介護業務をします。 |
ケアマネージャー | 施設や居宅介護支援事業所の必要な介護サービスの調整や手続き、相談をします。 |
介護施設相談員 | 入退所の相談や、施設内での生活の相談を行います。 |
医療系と介護系の専門職で分けてはいますが、実際の現場では同じ施設内で働いていたり、他の法人の専門職同士でも、ケアマネージャーを中心として連携を取りながら相談に応じたり、共同して支援できます。
行政や司法書士など
行政の職員 | 特に多いのが、介護保険担当課の職員や社会福祉、高齢福祉担当課の職員です。介護保険の申請や高齢福祉サービスの手続き、その他介護や福祉に関する各種相談に乗ってくれます。 |
弁護士 | 相続や遺言などの作成や仲介などで関わることが多くあります。特に相続などがスムーズにいかない場合などは、弁護士へお願いすることになりますが、費用は他の専門職と比べて、高めに設定されていることが多いでしょう。 |
司法書士 | 成年後見制度を利用する際に、選任されることが一番多いです。その他にも、円満に行う場合の相続などの依頼を受けることもあり、その際の費用も弁護士などと比較すると、低めに設定されていることが多いしょう。 |
税理士 | 贈与税や相続税など税金について相談が出来ます。 |
行政書士 | 弁護士や司法書士などが行う、独占の業務以外の書類や遺言、相続の相談等が行えます。 |
介護と司法書士の関係とは?
司法書士の一般的な業務内容としては
- 登記又は供託手続の代理
- (地方)法務局に提出する書類の作成
- (地方)法務局長に対する登記、供託の審査請求手続の代理
- 裁判所または検察庁に提出する書類の作成、(地方)法務局に対する筆界特定手続書類の作成
- 上記1~4に関する相談
- 法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談
- 対象土地の価格が5,600万円以下の筆界特定手続の代理及びこれに関する相談
- 家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者財産管理人、破産管財人などの業務
- 主に上記のようになっています。
成年後見制度
認知症や障害などの理由で、判断能力の不十分な人が、生活をする上で不利益を被らないよう、成年後見人が代わりに、財産管理や契約行為を支援する制度です。成年後見制度は、大きく分けると「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。
法定後見制度
家庭裁判所によって選ばれた成年後見人が、本人の利益を考え代理人として契約や同意など本人を保護、支援します。法定後見制度は「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれており、判断能力の程度など、本人の事情に応じて制度が選べます。
後見
- 対象となる方…判断能力が欠けているのが通常の状態の方
- 申立てできる人…本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
- 与えられる代理権の範囲…財産に関する全ての法律行為
保佐
- 対象となる方…判断能力が著しく不十分な方
- 申立てできる人…本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
- 与えられる代理権の範囲…申し立ての範囲内で、家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
補助
- 対象となる方…判断能力が不十分な方
- 申立てできる人…本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
- 与えられる代理権の範囲…申し立ての範囲内で、家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」
任意後見制度
本人が十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、予め自らが選んだ代理人(任意後見人)に、自分の生活、財産管理に関する事務について代理権を与える契約を、公証人が作成する公正証書で結んでおくというものです。本人の判断能力が低下した後に、契約で決めた事務について、任意後見監督人のもと、代理して本人の意思に従った支援をすることが可能となります。
相続や遺言の相談について
従来は弁護士に依頼するのが一般的でしたが、最近では弁護士だけでなく、司法書士や行政書士などに相談がくるようになりました。
各専門職で関わる業務が異なりますので、相談の際には確認しておきましょう。
司法書士 | 主に遺産整理全般や遺言執行者、相続登記といった、相続・遺言の実務に関わっています。 |
税理士 | 各手続きよりも、各種税に関する部分に関りがあります。 |
弁護士 | 相続などでトラブルや争いがあった場合に、相談を受け、代理交渉や裁判などします。 |
行政書士 | 遺言書などの事実関係書類の代理代行します。 |
資格別の専門性をよく理解し、必要な人へ相談することが大切です。
家族信託について
自分の老後の生活や介護などに必要な資金の管理などの為に保有する不動産、預貯金などの資産を、信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。家族や親族に管理を任せるので、高額な報酬は発生しない為、誰にでも気軽に利用が出来ます。
色々と制約の多い成年後見制度と比べ、柔軟に対応が出来る反面、入居契約を代理する権限がないなど、人によっては問題もある為、専門家によく相談し自分に合った制度を利用しましょう。
司法書士に依頼する場合の相場の費用
司法書士が業務をした時の報酬は、各司法書士が自由に定められます。多くの場合は、その額を明示して、依頼者との合意により決定します。
不動産登記関係
〇所有権移転登記(贈与)
関東地区全体の平均値 47,806円
〇所有権移転登記(相続)
関東地区全体の平均値 65,800円
相続を原因とする所有権移転登記の報酬は、相続人や不動産の数などにより大きく左右します。
成年後見関係
〇家庭裁判所に提出する報告書などの作成
関東地区全体の平均値 57,794円
成年後見制度には、「後見」「保佐」「補助」があり、「後見」の場合は、他と報酬が異なる場合もあります。
〇任意後見人に就任した場合における定額報酬の月額
関東地区全体の平均値 32,509円
司法書士が任意後見人に就任した場合、原則1カ月~2カ月に一回、本人と面接し、本人の生活状況と健康状態を把握し、財産管理及び身上鑑護のための事務をします。
遺言書作成サポート
遺言公正証書の原案を起案し、公証人役場へ同行して、立会証人となり、公正証書遺言作成のためのサポートをします。
関東地区全体の平均値 60,232円
原案を作成するまでに要した相談回数や時間、証人となる事などが、考慮されています。
介護している人が相続・遺言などで司法書士を選ぶ方法は?
現在はインターネットで検索をすれば、色々な情報が得られ、相談の窓口も数多く掲載されていますので、そのように探す方も多くいらっしゃいます。その他だと、行政で定期的に司法書士の無料相談等が行われていたり、行政より相談の内容に応じて、県などの司法書士会の紹介を受けられる場合もあります。
まとめ
一言で介護をするといっても、問題は介護の事だけではないことが多くあります。その際には行政や家族、医療や介護の専門家へ相談し、解決していきます。特に法律問題は、専門家に相談しなければ解決できないことも多いため、誰かに相談できる環境を、よく理解しておくことが大切です。どんな場面でどんな専門家に相談できるのかをよく理解して、いざという時にしっかり備えておきましょう。
この記事の監修者
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