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【令和4年度の動向】成年後見関係事件の概況からわかる後見制度の新展開!保佐・任意後見契約で人生のリスク管理

後見制度の新展開バナー

後見人制度という言葉をご存じでしょうか?

この制度は認知症や精神疾患などの影響で自己判断能力が低下した人の財産を守るための制度です。また、後見人制度には「法廷後見」と「任意後見」の2種類があります。

「法廷後見」とは本人の判断能力が低下した際に、その親族などが家庭裁判所に対して申し立てを行い、本人に対するサポートが提供されるものです。法廷後見は3つの類型があります

  1. 後見:ほとんど判断力がない人に適応
  2. 保佐:相当程度に低下した人に適応
  3. 補助:ある程度低下した人に適応

一方「任意後見」とは、本人の判断能力が低下する前に、将来任意後見人になる人と公正証書で任意後見契約を結び、後に本人のサポートを行なってもらう制度のことです。後述しますが、任意後見にも「将来型」「移行型」「即効型」の3種類があります。

今回、最高裁判所事務総局家庭局が公開した令和4年度「成年後見関係事件の概況」では、任意後見人についての特徴が述べられていました。この記事では任意後見人についてや令和4年度の動向などを解説していきます。

任意後見制度・任意後見監督人とは?

改めて任意後見制度と任意後見監督人について説明します。

任意後見制度について

任意後見」とは、将来的に判断能力が低下したときの備えとして、本人と任意後見人との間で公正証書で締結される契約のことです。任意後見契約を結ぶタイミングは、本人の判断能力が十分なうちに行われます。本人の判断能力が低下した場合には、任意後見監督人が選任され、任意後見がスタートします。任意後見には「将来型」「移行型」「即効型」の3つの利用形態があります。

将来型」:将来的に本人の判断能力が低下した際に後見をスタートさせます。

移行型」:本人の判断能力が十分なうちは任意代理契約を締結します。判断能力は十分だが、身体的な問題で思うように動けない場合に代理で財産管理などを行います。もし将来的に判断能力が低下した場合には、「任意後見」という制度に移行します。

即効型」:任意契約締結後直ちに任意後見をスタートさせます。

任意後見監督人とは?

任意後見監督人は、任意後見人が契約を遵守して適切に業務を行っているかを監督する役割を持ちます。このため、財産目録などを提出させることもあります。また、本人と任意後見人の利益が対立する場合には、任意後見監督人が本人の代理をします。

令和4年度の後見制度の傾向:後見・補助は微減、保佐微増

法定後見制度と任意後見制度の傾向を確認してみましょう。

引用:成年後見関係事件の概況 令和4年1月〜12月

(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/20230317koukengaikyou-r4.pdf)

後見制度の傾向

法廷後見の傾向としては、わずかではありますが保佐類型が多くなってきている点です。保佐類型は後見類型よりも本人の意思で行えることが多いので、より本人の意思を尊重する傾向になったと言えるでしょう。

後見は微減も申立て数は多い

後見類型は依然として申立て数が多い傾向です。令和4年度は微減ではありますが、保佐類型が8,200件、補助類型が2,652件なのに対して、後見類型は27,988件と圧倒的に多いです。

任意後見監督人の審判申立ては過去最高

令和4年度は任意後見監督人の審判申し立てが879件、前年度比で12.1%と過去最高の伸び率となっています。自分の意思で後見人や内容を決められる任意後見契約が少しずつ認知され、普及しつつあると言えるでしょう

任意後見監督人の審判申立ての理由

預貯金管理・解約が最大の理由

任意後見監督人の審判申立てでもっとも多い理由が預貯金管理・解約です。判断力が低下した親族の預貯金を下そうとおもったが、銀行側から「本人の意思確認が必要」と言われて現金を引き出せない事案があり、後見制度を利用しようと思う方が多いと思います。

判断力が低下した後では法廷後見となり、本人に意図しない形で財産を管理される可能性もあるため、本人の意思を尊重した任意後見監督人の審判申立てが増えていると考えられます。

事前対策の重要性

法廷後見制度において、本人が被後見人と認定されると、法律的な問題が発生します。被後見人には訴訟能力がなくなるため、自ら損害賠償請求などの訴えを起こすことはできません。つまり、後見人に対して法的な請求をすることができなくなるのです。

こうした問題を少しでも避けるために、任意後見制度を利用して前もって対策していくことが重要と言えるでしょう。

任意後見契約の認知拡大への期待

成年後見制度利用促進専門家会議などの取り組みにより、法定後見ではなく、自分で意思を決められる任意後見契約の認知を国家戦略として広め、任意後見契約を締結している人へ連絡をするなどの広報活動を行いました。

その結果、任意後見制度の認知拡大に繋がりました。こうした取り組みが広がり、国民への認知がさらに拡大することに期待が高まります。

市区町村長・本人・親族による申立ての現状

任意後見監督人の審判申立てはどのような人が申立てを行なっているのでしょうか?

申立者の比率変化

令和4年度の割合は市区町村長が23.3%、続いて本人が21%、その次が子の20.8%となっています。市町村長の割合は平成19年ごろより本人・親族より増加しており、令和4年度では本人・親族との差が大きくなっています。また、興味深いのは平成24年度より親族の割合が減少し、市区町村・本人の割合が増加している点です。

行政支援の必要性

行政が増加している背景には本人が核家族化などにより親族と疎遠、または親族がいない独り身世帯のため、行政が関わって本人の財産を守る支援を行なっていると考えられるでしょう。そうした環境にある方達を支援するため、行政の動きは必要になっていると思います。ただ、行政も完璧な支援が行えるわけではないので、信頼できる人がいる場合は任意後見契約等を行なっておくと良いでしょう。

親族後見人の傾向

それでは次に後見人となる人の割合のうち、親族が後見人となる割合を見ていきましょう。

親族が後見人に選ばれる割合

成年後見人等と本人との関係別件数

引用:成年後見関係事件の概況―令和4年1月~12月

グラフをみると後見人に親族が選ばれる割合は19.1%となっています。また、右側のグラフは任意後人の候補者の割合です。このグラフから読み取れるのは、当該申立てにおいて「後見人候補に親族」と記載している割合が全体の23.1%しかなく、実際に親族を候補として挙げている割合が少ないということです。

では親族が後見人に選ばれるメリットやデメリットにはどういったものがあるのでしょうか?

親族が後見人に選ばれるメリット

  • 当事者の状況や願望を理解している可能性が高いため、利益相反の心配が少ない
  • 親族同士の信頼関係がある場合には手続きが円滑に進められる
  • 費用を節約できる
  • 当事者の自己決定権をより尊重できる傾向があるため、当事者が自分の意思で決定できる可能性が高い

デメリット

  • 親族による後見がうまくいかない場合、家族間の関係が悪化する可能性がある
  • 親族が後見人に向いていない

親族後見人に制限がつけられるケース

制限つき親族後見人とは後見制度支援信託、複数後見、後見監督人のいずれかを利用している親族後見人のことを言います。これは1人の人の後見人として、親族と専門家が任命されていることを意味しています。この状況には「信託設定のための後見人」と「権限分掌のための後見人」の2つのパターンがあります。

信託設定のための後見人

後見制度支援信託を利用するために専門家の後見人が選出され、信託銀行への送金が済むと任務が終了します。

権限分掌のための後見人

身上監護は親族、財産管理は専門家と権限が決められています。そのため、親族が本人のために財産を使いたくても専門家後見人が同意しなければ使うことができません。親族としては第三者に財産権限を握られてしまうため避けたい状況です。

後見制度を利用する本人や親族の検討事項

後見制度の利用を考えている本人や親族は、より良く制度を利用するためにどうしたら良いでしょうか。

成年後見制度の利用者目線

任意後見人制度の認知が広まってきたとはいえ、全体で見るとまだ割合は少ない状況です。国家としても認知拡大を行なっています。成年後見制度の利用を検討している方は、自分自身や家族の将来について考える必要があります。

家族信託と後見制度の関連性

後見人の選定や財産管理の委託先を選ぶことは重要です。また、自分の希望や意思を伝えることも大切です。利用者自身が主体的に関わり、適切な後見人を選ぶことで、より安心して生活することができます。親族としても本人の意思をできる限り反映させるため、任意後見制度について情報収集を行い、本人と話し合いを持つと良いでしょう。

任意後見制度を正しく利用するためには

まだまだ認知が十分ではない任意後見制度。言葉自体も馴染みがなく、どこに相談していいかわからない方も多いと思います。そこで、任意後見制度を正しく利用し、本人・親族共に安心して財産管理を行えるようにするために専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

任意後見制度に関する申立てが増加している背景には、任意後見契約の広がりがあります。例えば、預貯金の解約などは後見制度を必要とすることが多いですが、自分でできる範囲が広い保佐や補助でも対応できる場合があります。

また、より個人の意思を尊重するために法的な問題が少ない任意後見契約を利用して対策することが大切です。また、市区町村長や本人による申立が増えている一方、親族の申立は減少しています。親族が後見人に選ばれるケースが増えていますが、制限付きのケースも約51.5%あります。本人の判断力が低下する前に、後見制度の現状を知り、任意後見契約や家族信託などの対策を考えましょう。自分の意思を守ることが、安心な生活につながります。

 

この記事の監修者

あいりん行政書士法人    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん行政書士法人と司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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