現状の公正証書遺言書作成数の推移
遺言を行う上で、現在最もメジャーな方法は公正証書遺言と言えるのではないでしょうか。公正証書遺言とは、「公正証書」という形で残される遺言であり、法律実務経験の豊富な公証人が作成に関与する形式のものです。以下の表は直近の公正証書遺言の作成に関するデータです。
- 平成元年 4万941件
- 平成2年 4万2,870件 ....
- 平成29年 11万0,191
- 平成30年 11万471件
- 令和元年 11万3137件
- 令和2年 9万7700件
日本公証人連合会の発表では、平成元年の公正証書作成件数は約4万件です。それと比較し、令和に入った現在では年間作成件数が2倍以上に増加しています。終活という言葉もあるように、相続に関して関心を持つ方が増えており、またそれ以上に公正証書遺言の作成の問合せも大変増えた印象です。
令和2年になって公正証書遺言の作成件数が下がった原因は、法務局で自筆証書遺言の保管をしてもらえて検認も不要になる自筆証書遺言保管制度が開始されたことや、世界的な疫病の蔓延によりご高齢の方が外出自粛されていることが考えられます。
公正証書遺言作成のメリットとデメリット
公正証書遺言を作成する際には当然ながら利点と欠点があります。費用や労力等、それぞれ遺言の形式によって異なります。
公正証書遺言作成のメリット
公正証書遺言が選ばれる最大の利点は、有効性が保証されることです。公正証書遺言は公証役場で公証人によって作成されます。その為、要件不備を理由として遺言自体が無効となってしまう事態は通常起こり得ません。 一方、自筆証書遺言や秘密証書遺言に関しては遺言作成者が公証人ではない為、不備に気付かぬまま作成されてしまう可能性があります。その場合、遺言としての効力を発揮したい時に無効と判断されてしまう恐れがあり、それでは折角作成した遺言書も意味をなさないものとなってしまいます。また、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、公正証書遺言のように公証人や証人のような第三者が作成に関与しない為、詐欺や強迫等の絡んだ、本人の真意でない内容の遺言が作成されてしまう恐れもあり、注意が必要です。 公正証書遺言は公証人が有効な遺言作成をしている為、本人の死後、有効無効を判断する家庭裁判所による遺言検認作業は省略されます。自筆証書遺言に関しては、前述した法務局にて保管されているもの(自筆証書遺言書保管制度を利用したもの)に限り検認作業の省略が認められますが、それ以外のものは検認作業が必須となりその分手間が掛かります。
上記のように、公正証書遺言は確実に有効な遺言を残したいという場合に適しています。公証役場で管理されるため、遺失、破棄、発見されないというリスクもありません。その面で1番安心できる遺言形式と言えるでしょう。
公正証書遺言作成のデメリット
反対に、公正証書遺言は公証人や証人といった第三者に対し、自身の財産を公にしなくてはならないという欠点があります。財産を公にしたくないとお考えの方には不向きです。また、公証人や証人に対して支払う手数料や報酬により、他の遺言形式に比べて多くの費用が発生します。財産内容の調査、書類収集等により作成に手間と時間もかかります。 それらを天秤に掛けた上でも、確実に有効性のある遺言を作成したい方には公正証書遺言をお勧めします。
公正証書遺言作成の前に行うべき2つのこと
公正証書遺言を作成する前に、①財産の洗い出し、②財産を渡したい人を決定する、以上2点を事前に行っておきましょう。考えが固まる前に専門家へ相談をしても、上記①②は本人にしか行えない為、次に進めることができません。
財産の洗い出し
はじめに遺言者本人の財産の洗い出しを行いましょう。よくある財産として、預貯金、不動産、株式が考えられます。預貯金に関しては、通帳等により定期預金を含めた現在の残高を確認しましょう。
- 預貯金:通帳を確認
- 不動産:毎年市町村等から届く「固定資産税納税通知書」を確認
- 株式:毎年証券会社から届く「取引残高報告書」を確認
財産を渡したい人を決定する
前述のように洗い出した財産をもとに、遺言者本人が財産を渡したい相手を決定していきます。こちらも本人にしか決めようのない事項でもある為、事前に考えておくようにしましょう。確定ができない場合でも、仮として大まかに決めておくことをお勧めします。具体的には専門家と相談しながら決めていけば良いのです。 なお、財産を渡したい人を選ぶ過程では、渡す金額をその場で決めてしまわず、割合で決めておくことがお勧めです。万が一、将来その財産の全てが残らずに半分になってしまったとしても、あるいは財産が増えていた場合であっても、割合で決めておけば相続をスムーズに行うことができます。これにより、相続人間の不要な争いやトラブルを事前に回避することもできます。
公正証書遺言作成時の必要書類
- 遺言作成者本人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内
- 遺言作成者と相続人との続柄が記載された戸籍謄本
- 相続人以外に遺贈する場合:その遺贈を受ける人の住民票
- 財産資料一式(通帳・登記事項証明書など)
証人の用意
公正証書遺言作成時には口述立ち会いとして証人2人が必要です。相続関係者や親族は証人欠格に該当する可能性があるため、通常は当該相続に無関係な第三者の証人を探す必要が生じます(下記民法第974条参照)。 当事務所にご依頼下さった場合には、当事務所の有資格者と事務員を証人にさせて頂きます。
ただし、以下の点にご注意ください。
民法第974条(証人及び立会人の欠格事由) 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。 1 未成年者 2 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族 3 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
専門家に証人を依頼する利点
専門家に遺言作成依頼をした場合、通常その専門家が証人の役割を務めます。 証人欄に国家資格保有者と記載できることで信頼性が増し、また第三者に依頼をして正式に作成されたものであることを示すことにもなるので、相続人間の紛争予防に役立ちます。
証人代行依頼の費用相場
公正証書遺言の証人を依頼する際、以下3つの依頼先が考えられます。
・ 行政書士や司法書士、弁護士等の士業
・ 公証人役場
・ 知人
それぞれの費用の目安はおおよそ次の通りです。
行政書士や司法書士、弁護士等の士業に依頼する場合
守秘義務のある行政書士や司法書士、弁護士等の士業は、遺言内容を絶対に他に知られたくないという方にお勧めです。 費用目安:1万円(1人当たり)
公証人役場で紹介してもらう場合
依頼できる人を見つけることが難しい場合には、公証役場で証人紹介を頼むことができます。 費用目安:6,000円~7,000円(1人当たり) ※公証役場によって異なります。
信頼できる知人に依頼する場合
遺言内容を知られても良いと思える仲であり、内容を他言する心配のない、信頼できる知人が身近にいる場合、その人に証人を依頼することもできるでしょう。 相場から考えた適当なお礼の金額は下記の通りです。 費用目安:5,000円~1万円(1人当たり)
上記の通り、依頼先によって費用に差があります。証人が公証役場に行く際の交通費も別途用意が必要です。
公正証書遺言作成と専門家の役割
公正証書遺言の原案作成を専門家に依頼する場合、司法書士・行政書士・弁護士といった法律系の国家資格者に相談をするのがメジャーです。 相続時に確実に揉めることが予想されるのであれば弁護士に依頼をし、そうでない場合は普段から遺言作成業務に携わっている司法書士や行政書士に依頼をするのが良いでしょう。
専門家は公証役場との調整役
実際の流れとしては、代理人(司法書士や行政書士)が事前に遺言作成者の話を聞き、その趣旨に沿って遺言の文案作成をします。公証人との打合せも事前に行ってから進めるため、遺言作成者の手間と負担は少なくて済みます。
公証人の立場としても、専門家が間に入っている方が原案の手直しもなく書類上の不備も少ないため、専門家へ依頼されている方が好ましいようです。
横浜市内で遺言書作成依頼をする費用相場、依頼先
横浜市内で遺言書作成依頼をする場合、一般的に10万円程度が平均の費用相場です。弁護士に比べて司法書士、行政書士に依頼する場合は費用を抑えることが可能です。証人代行依頼をする場合、証人費用が遺言書作成費に含まれているのかが気になりますが、証人費用は別で請求する事務所が多いようです。
遺言書作成費の相場(具体例:横浜市内での場合)
横浜市内では様々な士業事務所が遺言書作成業務を行っています。
- 司法書士事務所:10万円~
- 行政書士事務所:7万7,000円(証人費用別、打合せ回数1回)
- 弁護士事務所:16万5,000円(証人費用込) 具体的な費用は各事務所にお問い合わせください。
遺言書作成相談のできる機関
遺言書を作成したい場合、下記のような機関にご相談下さい。
安心感を求める方:金融機関
遺言書作成や保管、相続開始後の遺言執行業務を「遺言信託」というサービスで対応。金融機関である安心感もあり、遺言書作成の相談役となってくれます。一方、費用が高い(遺言執行業務込みで少なくとも150万円以上)ことや、トラブルが想定される場合には依頼を断られる可能性があるという欠点もあります。
トラブルを懸念される方:弁護士事務所
弁護士と他の専門家の異なる点は、トラブルが起こった際に代理人として相手方と交渉し、調停や裁判ができる点です。遺言書作成段階で既にトラブルが起きると想定される場合や、相続開始後のトラブルに備える場合には最適ではありますが、その一方で高い費用が必要になります。また、相続専門の弁護士を選ばないと後々トラブルになることもあります。
相続税が気になる方:税理士事務所
税理士は遺言書作成業務には対応しておりませんが、相続税の相談役をすることはできます。当相談室では相続税の専門家として、税理士に遺言書作成前の相続税シミュレーションを依頼し、遺言書内容に反映させています。
権利関係が複雑な不動産をお持ちの方:司法書士事務所
遺言書作成相談において行政書士と大きく異なる点はありませんが、複雑な不動産の権利関係がある場合、不動産登記の専門家として適切な相続方法のご提案や遺言書の起案を行うことができます。費用に関しても、金融機関や弁護士に比べて抑えられることが特徴です。
横浜エリアで遺言書作成を取り扱う相続専門家
(1)さかえ司法書士事務所 神奈川県横浜市神奈川区青木町7番地6 広洋フォルム横浜302
(2)江崎純子行政書士事務所 横浜市中区尾上町6-87-1 ダイムラービル
(3)行政書士横浜みなとリーガルサービス 横浜市南区堀ノ内町一丁目1-2
(4)横浜銀行 横浜市 西区みなとみらい3丁目1番1号
(5)三菱UFJ銀行 横浜市西区北幸1-11-20
遺言公正証書作成ができる公証役場一覧
博物館前本町公証役場
〒231-0005 横浜市中区本町6-52 本町アンバービル5F 電話:045-212-2033
横浜駅西口公証センター
〒220-0004 横浜市西区北幸1-5-10 JPR横浜ビル4階 電話:045-311-6907
関内大通り公証役場
〒231-0047 横浜市中区羽衣町2-7-10 関内駅前マークビル8階 電話:045-261-2623
みなとみらい公証役場
〒231-0011 横浜市中区太田町6-87 横浜フコク生命ビル10階 電話:045-662-6585
尾上町公証役場
〒231-0015 横浜市中区尾上町3-35 横浜第一有楽ビル8階 電話:045-212-3609
鶴見公証役場
〒230-0051 横浜市鶴見区鶴見中央四丁目32番19号 鶴見センタービル202号室 電話:045-521-3410
上大岡公証役場
〒233-0002 横浜市港南区上大岡西1-15-1 camioビル4階403-2号室 電話:045-844-1102