この記事を要約すると
- 相続不動産の換価分割では売ってもらえない・贈与税がかかるなどの問題が起きやすい
- 売却の約束は守られないケースが多いため、事前の対策が重要
- 兄弟姉妹で揉めないために、専門家を交えて遺産分割協議をするべき
相続する財産の中に不動産がある場合、換価分割と呼ばれる方法で遺産分割をする方法があります。
「一旦、長男の私が名義人になって相続するから、不動産を数年後に売却して代金は分けよう」などと約束を、兄弟姉妹間で行うケースは多いです。
しかし、実際にはその約束が守られず、トラブルに発展することは少なくありません。その他にも、実際に売却代金が分配されても課税のリスクがあり、当初の予定通りにはいかないケースが多いでしょう。
ここでは相続不動産の「換価分割」とはどのようなことなのか、換価分割ではどのような問題が起こるのかを、実際の事例とともに解説します。
また、トラブルを防ぐための対策も紹介しています。これから不動産を相続する可能性がある人、換価分割を検討している人はぜひ参考にしてください。
目次
相続不動産を「換価分割」
相続不動産の換価分割とは、相続した不動産を売却し、その売却代金を分割する方法です。
売却にかかった仲介手数料・解体費用・測量費用などの経費を不動産の売却代金から差し引いた金額を、相続人同士で分割します。
相続不動産を円満に分割する方法だと思いがちですが、実はトラブルが発生することも多い方法です。
相続不動産の換価分割で起きる問題点2つ
相続不動産の換価分割においては、以下の2つの問題が起こりやすいです。
①将来的に売却する口約束が守られない
換価分割では、相続不動産を一旦1人の相続人が相続します。名義を取得した相続人の財産となるため、不動産を所有している相続人が売却するための行動を起こさないと、売却はできません。
遺産分割時は売却をするつもりでいても、その後気が変わるかもしれません。また、もしかして最初から他の相続人をだますつもりで、名義人になった可能性もあります。口約束だけを信じるのはとても危険です。
だからといって、名義を取得した本人が違法行為をしているわけではないため、一度取得されてしまった不動産は、名義人に売却してもらうように説得するしか方法はありません。
②売却代金分配時の贈与税の課税リスク
売却代金分配時に発生する贈与税の課税リスクは、知識不足により起こりやすい問題です。換価分割が認められるのは、遺産分割協議書に「換価分割」をすることを記載した場合のみです。
何も記載せず、遺産分割によって相続不動産の名義を取得した相続人が、不動産を売却してその代金を分割すると、贈与税が発生します。
相続で取得している不動産なのに贈与税がかかるの?と思うかもしれませんが、すでに名義を変更しているため、相続不動産は名義人の所有財産です。当然、分配による贈与税は発生します。
相続税の課税リスクを回避するために、遺産分割協議書に「換価分割」の旨を記載しておくことを忘れないようにしましょう。
売却をする約束を守ってくれないトラブル
換価分割による問題点をチェックしたところで、以下ではトラブルの事例を見ていきます。
特に、売却をする約束を守ってくれないトラブルは、すでに名義を変更してしまってからではどうしようもなくなってしまうため、未然に防ぐため、発生しやすいトラブルを知っておきましょう。
事例① 長男単独名義に変更して後悔
被相続人が母親、相続人が長男・長女の2人、実家である対象不動産に長男が住んでいた場合の事例です。
わずかだった預金は葬儀代で消えてしまい、実家である不動産のみが遺産だったため、長女は「実家を売って代金は折半しよう」と提案しました。
長男は、すぐには引っ越しできない、固定資産税がかかるから一旦名義を変更してほしい、3年後には売却をして代金を折半する、という話を持ち掛け、結果的に長男の要望通り、一旦名義を変更することに。
しかし、約束した3年を過ぎ、5年を経過しても売却がしてもらえず、話にも応じてもらえなくなり、困ってしまった…という事例です。
すでに名義変更の旨を記載した遺産分割協議書に実印を押しており、実質的に名義を取られてしまった状態です。遺産分割協議書には換価分割であることを記載していなかったため、実家を売却する話は口約束にしか過ぎません。
裁判をしても長女に勝ち目はなく、諦めるしかない状態です。関係が良好だし、兄弟姉妹だから大丈夫だろう、という油断が、大きな後悔を招く要因となってしまいます。
事例② 遺産分割協議書に換価分割のことを書いたのに・・・
被相続人は配偶者、相続人は長女・次女・長男の3人、対象不動産には長男の夫婦が居住中の場合の事例です。
葬儀を終えたのち、預金から葬儀代などを引いた1500万円を3等分し、実家も同時に売却して3等分しようという話になりました。
しかし、長男夫婦が住んでおり、長男の妻からは「相続不動産の名義人をいったん夫として、売却代金を3等分にしては?」という提案を受けました。
換価分割の旨が遺産分割協議書に記載されていれば問題が起きない、と納得したうえで名義を長男へと変更することに。
しかし、数年経過しても「引っ越し先がなかなか見つからない」として、売却に向けた話は進まない状態になっている、という事例です。
換価分割することが協議書に記載されているため、裁判にかけることで強制的な執行は可能です。しかし、兄弟姉妹間で揉めたくないのは、誰でも同じです。その気持ちを利用し、売却を先延ばしにしている人もいるでしょう。
兄弟姉妹だからと信用せず、いつ実現するかわからない将来の約束を安易にしないようにしましょう。
実家の換価分割でトラブルになりやすい
紹介したトラブル事例でもわかるように、換価分割でのトラブルは実家の相続時に発生しやすいです。その理由は、以下の4つが考えられます。
- 兄弟姉妹同士だから、と口約束で簡単に話を済ませてしまう
- 実家で暮らしている兄弟姉妹と、外で暮らしている兄弟姉妹による対立が起こりやすい
- 相続財産のうち、不動産が占める割合が大きい
- 兄弟姉妹だけで相続する場合、深く考えずに遺産分割を済ませてしまう
兄弟姉妹だから大丈夫だろう、と信じてしまった結果、トラブルになっているケースがとても多いです。また、換価分割に関する知識があまりないまま、売るときに考えればいいだろうと簡単に考えがちです。
相続に関する問題は、兄弟姉妹同士だからこそトラブルが起こりやすいです。換価分割の問題が発生したら、安易に話を済ませてしまう前に、専門家を入れて話し合いをしましょう。
相続不動産の換価分割で揉めない対策方法
相続不動産の換価分割で揉めないために大切なのは、事前にしっかりと対策をしておくことです。
行うべき対策は主に2つあります。
対策① 時間を空けずに売却してもらう
遺産分割協議から時間が経過すればするほど、揉めやすくなります。
時間が経つと、当初は売るつもりだった名義人も気持ちが変わって、売らずに済ませようとする可能性があるでしょう。また、不動産の情勢にも変化が起こります。
また、3年を経過すると「3000万円控除の特例」も適用できなくなってしまい、税務上でも不利になりやすいです。
できる限り時間を空けずに、名義を変更してからすぐに売却してもらい、換価分割を行いましょう。
対策② 遺産分割に専門家を交える
相続人同士だけでの話し合いだと、知識があまりなく安易に話を進めてしまいやすいです。しかし、遺産相続は、とても大きな問題です。
決して相続人同士だけで決めず、専門家を交えた話し合いをしましょう。
相続した不動産の換価分割なら当事務所へ!
相続した財産を換価分割を検討している、換価分割をしないかと話を持ち掛けられたというときは、まず専門家に相談をおすすめします。
当事務所では、実際にどんな手続きをしておけば将来的にトラブルにならないのか、そもそも換価分割をするべきか、などさまざまな相談に対応しています。
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まとめ
換価分割のトラブルは、相続人同士、特に、兄弟姉妹だけでの相続の場合に発生しやすい問題です。遺産分割で揉めて、兄弟姉妹の関係が崩れてしまうことがないように、しっかりと対策を行いましょう。
当事務所では、無料相談に対応しています。まずは気軽にお問合せください。お問い合わせはこちら。
この記事の監修者
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