この記事を要約すると
- 親のメールや書類から「電子申請システムのID・パスワード」を探し出すことがスタートライン
- 経産省への変更届は「相続を知ってから20日以内」が原則だが、遅れても諦めず速やかに提出すれば多くの場合は受理される
- 「FIT認定変更(経産省)」が完了しないと、「売電契約変更(電力会社)」ができないケースが多い
太陽光発電設備を相続した際、多くの人が直面するのが「手続きが複雑すぎて、何から手をつければいいか分からない」という問題です。
特にインターネットで検索すると「相続を知ってから20日以内に手続きしないと認定取り消し」という恐ろしい情報が出てきて、パニックになる方も少なくありません。
しかし、安心してください。
実務の現場では、書類集めに時間がかかることは考慮されています。
この記事では、司法書士の視点から、「建前の法律論」だけでなく、「実際にどう進めれば最短で完了するか」というゴールデンルートを解説します。
この記事はこんな方におすすめ
- 親が所有していた太陽光発電設備を相続したが、何から手をつければいいか分からない方
- FIT認定の変更手続きや電力会社への届出の方法を知りたい方
- 名義変更を怠るとどんなリスクがあるのか不安を感じている方
目次
太陽光相続のゴールデンルート|手続きの「正しい順序」
手続きは「並行して」進めるよりも、正しい順序で進める方が二度手間を防げます。
電力会社によっては、経産省の手続き(FIT変更)が終わっていないと、名義変更を受け付けてくれないからです。
失敗しない手続きのタイムライン
- 資料探索(最優先): 親の遺品から「ID/パスワード」「事業計画認定通知書」を探す
- 遺産分割(〜2ヶ月): 誰が発電設備と土地を継ぐか決め、「遺産分割協議書」を作る
- FIT変更申請(〜3ヶ月): 経産省へ変更届を出す(※ここが20日ルールの壁だが、書類が揃い次第すぐやる)
- 電力会社へ連絡(〜4ヶ月): FIT名義が変わったことを電力会社へ伝え、口座を変更する
- 相続登記(〜3年): 土地の名義変更を法務局で完了させる
以上が大まかな流れになります。
この流れを頭に入れた上で、それぞれの詳細を見ていきましょう。
【最難関】経済産業省へのFIT認定変更届(事業計画認定)
「20日以内」を過ぎてしまったら?
法律上、FIT認定の変更届は「相続を知った日(被相続人の死亡日など)から20日以内」に提出する必要があります。
しかし、戸籍謄本を集めて遺産分割協議をまとめる作業が20日で終わることは、実務上ほとんどありません。
現場の実態としては、20日を過ぎたからといって、直ちに認定が取り消されるケースは稀です。
重要なのは「放置しないこと」です。
20日を過ぎてしまっても、「書類が整い次第、速やかに提出する」ことで手続きは進められます。
「期限が過ぎたからもうダメだ」と諦めず、司法書士等の専門家に相談しながら手続きを進めてください。
【最大の落とし穴】ログインIDとパスワードが分からない!
FIT認定変更の手続きは、原則としてWeb上の「再生可能エネルギー電子申請システム」で行います。
ここで多くの相続人が直面するのが、「亡くなった親のログインIDとパスワードが分からない」という壁です。
もしIDが分からない場合は、以下の手順で対応します。
- 「事業計画認定通知書」を探す: 親の書類の中に、認定時に発行された紙の通知書がないか探してください。
そこに「設備ID」や「認定ID」が記載されています。 - メールアドレスを確認する: パスワードの再発行には登録メールアドレスが必要です。
親のスマホやPCが開ける場合は、メール受信箱を「JPEA」「再生可能エネルギー」で検索してみてください。 - JPEA(代行申請センター)へ問い合わせる: どうしても不明な場合は、JPEAへ問い合わせて「ID照会」や「ログインアカウントの承継手続き」を行う必要があります。
これには時間がかかるため、最初に着手すべき作業です。
電力会社への売電契約・名義変更
経産省(FIT)の手続きと前後して、電力会社(東京電力や関西電力など)への連絡も必要です。
重要なのは、「FIT認定の名義」と「電力会社の契約名義」と「振込口座の名義」を一致させることです。
ここがズレていると、売電収入が振り込まれなくなります。
- 提出のタイミング: 多くの電力会社では、「FIT認定の変更が完了したことを証明する書類(変更認定通知書など)」の提出を求められます。
そのため、FITの手続きがある程度進んでからの方がスムーズな場合があります。 - 口座凍結のリスク: 銀行が死亡の事実を知ると口座が凍結され、売電収入の振込ができなくなります。
電力会社への手続きが遅れると、振込不能のお知らせが届くことになるため、早めの連絡が必要です。
土地の相続登記(義務化への対応)
太陽光パネルそのもの(設備)は「動産」扱いのため登記は不要ですが、パネルが設置されている「土地」については相続登記が必須です。
- 3年以内の義務: 2024年4月から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象となります。
- 必要書類の重複: 相続登記には「戸籍謄本」や「遺産分割協議書」が必要です。これらはFIT変更届でも使用するため、書類はすべて「原本還付(原本を返してもらう)」手続きをするか、複数セット取得しておくと効率的です。
ログイン情報が見つからないと、手続きのスタートラインにすら立てません。
まずは親の遺品整理の際、太陽光関係の書類を捨てずに確保することから始めてください。
まとめ:諦めずに「正しい順序」で進めよう
太陽光発電設備の相続は、以下の3ステップが基本です。
- FIT認定変更(経産省): ID確保と書類準備が最優先。20日を過ぎても諦めずに提出!
- 売電契約変更(電力会社): FIT変更が終わったら速やかに口座変更を。
- 相続登記(法務局): 3年以内に土地の名義を変える。
これらを自分一人で行うのはハードルが高いと感じるかもしれません。
特に「IDがない」「親がどの業者と契約していたか分からない」といった場合は、専門家の調査が必要です。
手続きが遅れて売電収入が止まってしまう前に、まずは無料相談などを利用して「現状の整理」から始めることをおすすめします。
この記事の監修者

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