遺産分割とは
相続の開始によって相続財産は共同相続人の共有となり、遺産分割協議を経て各相続人に帰属します。つまり、遺産分割は相続財産を各相続人に適宜の持分を帰属させる手続きです。
したがって相続人は不安定な共有状態を解消させるべく、遺産の分割を求めることができます。(民法907条)ただし、遺言により遺産分割が禁止される場合(民法908条)や家庭裁判所により禁止(民法907条)される場合もあります。また共同相続人全員の協議によって遺産分割を禁止された場合も(民法256条)同様です。
3種類の遺産分割協議
遺産分割には3つの種類があります。①遺言による指定分割、②相続人による協議分割、③家庭裁判所の調停もしくは審判による分割があります。遺産分割は、被相続人が遺言にて遺産分割方法の指定をしたらそれに従い分割されます。(民法908条)
遺言による指定がない場合には、共同相続人全員で遺産分割協議をします。それがダメであるなら最後は家庭裁判所に遺産分割の取りまとめを持ち込むことになるでしょう。(共同相続人で協議をしないのに家庭裁判所に持ち込むことはできません)
遺産分割の基本
遺産分割に関して法律は「遺産分割は、相続財産に入る物や権利の種類や性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態、生活などその他一切の事情を考慮にいれてすべき」とされています。
協議または調停による分割は、当事者間の合意を基本としていて、これが各相続人の自由な意思に基づくものである以上、ある程度自由な遺産分割の結果であっても許されます。
遺産分割の態様
遺産分割には4つの種類があります。⓵現物分割②代償分割③換価分割④共有分割です。
現物分割
現物分割とは、相続財産を現物のまま遺産分割することです。
代償分割
代償分割とは、特定の相続人に他の相続人に対する債務を負担させる方法です。代償の方法として相続人の固有財産である不動産をほかの相続人に与える方法もあります。
例えば共同相続後、金銭に代わる代償として、相続人中の一人の固有財産をほかの相続人に与えることを含めてされた遺産分割協議書を添付して「遺産分割による贈与」を登記原因とする所有権移転登記をすることができます。
換価分割
換価分割とは相続財産を売却し、その代金から必要経費を差し引いた残りを共同相続人間で各自の相続分に応じて分配する方法をいいます。
不動産の場合は共同相続登記をし、その後に買主への所有権移転登記をすることになります。
共有分割
共有分割とはそれぞれの相続財産を共同相続人の共有とする方法です。いったん共有とした後に再度の分割をするならば、通常の民法256条の共有物分割に該当します。
共同相続人間の協議または家庭裁判所の調停による遺産分割においては必ずしも現物分割が原則であるわけではありません。
諸事情を検討して現物分割、換価分割、代償分割を選ぶことができます。
遺言による遺産分割方法の指定(指定分割)
被相続人は遺言で遺産分割方法を定め、または遺産分割方法を定めることを第三者に委託することができます。(民法908条)この方法が取られた場合、その遺言通りに遺産分割が行われます。
なお、遺言以外の方法で遺産分割方法を指定することはできません。これは被相続人の最終意思を尊重する趣旨があるからです。
遺言による遺産分割方法の指定の内容例
「遺言者甲は、次の通り遺産分割の方法を指定する。預貯金は鶴見太郎へ、不動産は鶴見一郎へ相続させる」旨の遺言は有効なのでしょうか。この定め方は有効です。最高裁平成3年4月19に判決がでたからです。
遺産分割の禁止
亡くなった方は遺言により相続がスタートしてから5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁止することができます。(民法908条)5年を超える期間を超えた場合は無効になるのでなくて、5年の禁止として有効とみるべきです。