戸籍広域交付制度 アクセス集中でシステム崩壊!?戸籍交付制度とは?相続で使えるの?

戸籍広域交付制度 アクセス集中でシステム崩壊

この記事を要約すると

  • 戸籍広域交付制度により戸籍謄本などを手間や時間を掛けずに取得しやすくなった
  • 令和6年3月1日から改正戸籍法が施行されたが、初日はアクセスが集中しシステムエラーがでるなど課題が浮き彫になった
  • 戸籍謄本の取得以外の相続手続きは、専門家への相談が望ましい

相続手続きの第一歩として、相続人の特定があります。相続人の人数や故人との続柄は、法定相続分や遺留分、相続税の計算などに大きく関わります。

相続権を持つ人を特定するには、「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本」が必要です。

配偶者や親、祖父母などの戸籍までさかのぼる為、5通くらいになることも珍しくありません。さらに転籍などがある場合には、10通くらいになるケースもあります。

これまでは、「被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本」を揃えるために、本籍地の市町村役場の窓口でなければ申請させてもらえませんでした。

しかし、戸籍法の改正により「戸籍広域交付制度」が2024年(令和6年)3月1日から施行されることになり、戸籍の取得が簡単になりました。

これにより、本籍地が全国どこであっても、出生から死亡までの戸籍謄本一式を、最寄りの市区町村役所の窓口だけで一括請求できるようになります。

これまでの手間や時間を大幅に減らすことができるようになるということで、「戸籍広域交付制度」の施行には大きな注目が集まっていました。

ところが、実際に今月1日から「戸籍広域交付制度」の運用が開始されましたが、初日からオンラインアクセスが集中し過ぎて証明書の発行がしにくい状況が続くなど、さまざまな課題が浮き彫りになっています。

NHK NEWSでは、以下のように報じています。

【法務省によりますと1日朝、各地の自治体から「ほかの自治体の証明書が取得できない」という連絡が相次ぎ、原因を調べたところ、各地の役場と法務省を結ぶシステムにアクセスが集中していたということです。

この影響で発行作業に時間がかかって途中で手続きを中断し交付できないケースがあるなど、証明書が発行しづらい状況になっているということです。法務省は、こうした状況の解消に向け対応を検討しています。】

引用:『戸籍広域交付制度 初日 アクセス集中で証明書発行しづらい状況』https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240301/k10014376051000.html

中には、当日中の証明書の発行を断念せざるを得ない市区町村もあり、日を改めての発行や急ぎの場合は本籍地での発行を呼びかける事態となりました。

こうしたシステムトラブルについての対策は現在も検討中であり、今後の「戸籍広域交付制度」の利用において不安が残ります。

これまで手間や時間が掛かっていた相続手続きの一部が簡略化できるという点で、「戸籍広域交付制度」への期待は高まっていますが、そのスムーズな運用にはまだまだ時間が掛かりそうです。

 

戸籍の制度はどう変わる? 

令和元年5月24日、一部の戸籍法を改正することが(令和元年法律第17号、同月31日公布)が決まりました。

改正戸籍法による『戸籍広域交付制度』は2024年(令和6年)3月1日より施行されます。これにより、これまでと何が変わるのか、詳しく説明していきます。

本籍地以外の市区町村の役所窓口で取得可能

改正された戸籍法による『戸籍広域交付制度』が施行されることにより、本籍地ではなくても全国各地の市区町村役場の窓口で戸籍謄本などの請求ができるようになります。

※電子化された戸籍については「戸籍証明書」とされますが、ここでは分かりやすく説明するために「戸籍謄本」「除籍謄本」と記載します。 

この制度により、これまで本籍地が遠方だった場合や、複数人の戸籍謄本が必要な場合に掛かっていた手間や時間が解消されるようになりました。

たとえ本籍地が遠方でも、自宅や勤務先近くの最寄りの市区町村役場の窓口で請求が可能になり、本籍地が異なる複数人分の戸籍謄本も、まとめて請求することができます。

本籍地ごとに役所を何度も往復したり、複数箇所に戸籍の郵送請求をしたりといった手間が無くなります。

取得できるのは「戸籍謄本・除籍謄本」のみ

今回の広域交付制度で戸籍謄本などが手軽に請求しやすくなったといっても、限度があります。

この制度で請求が認められているのは、『戸籍謄本』と『除籍謄本』のみが対象です。

戸籍謄本や除籍謄本の一部のデータのみを証明した戸籍抄本(一部事項証明書、個人事項証明書)については、請求することができません

他にも、コンピューター化されていない一部の戸籍・除籍謄本や改正原戸籍も対象外となります。『戸籍謄本』と『除籍謄本』以外のものは、これまで通り、本籍地の市区町村の役所で取得しなければなりません。

取得できる範囲は請求者本人・配偶者・直系尊属・直系卑属のみ

広域交付制度で戸籍謄本等を請求できる範囲は以下の通りです。

  • 本人
  • 配偶者
  • 直系尊属(父母、祖父母など)
  • 直系卑属(子、孫など)

※配偶者との間に子がいない場合、法定相続の第三順位となる兄弟姉妹や甥姪などが該当する場合があります。

この場合、請求者本人が相続においてどの立場にあるかによって、途中まで広域交付制度での取得が可能となり、その先はこれまで通り、本籍地の市区町村役場で取得するケースも考えられます。

請求できるのは本人のみで代理人請求は不可

今回の改正戸籍法では、以下については認められていません。

  • 郵送請求
  • 本人以外の請求(代理人や専門家の職務上請求含)

広域交付制度を利用する本人が、市区町村の役所窓口に訪問して請求しなければなりません。

これは、①個人情報保護②一部の役所に負担が集中するのを防ぐなどの観点から『本人のみの窓口請求』と定められました。

 

戸籍がオンライン化ですごい楽?電子証明書がスタート

改正された戸籍法に基づいて施行されるのは、『広域交付制度』だけではありません。戸籍に関連する改正点として「電子証明書の発行」が可能になることが挙げられます。

戸籍電子証明書が発行できるようになること、すなわち戸籍がオンライン化することは大きな改正点であるといえます。

具体的な流れや手続きについては以下の通りです。

PCやスマートフォンからインターネットにアクセスし、オンライン上で自身の住む市区町村の役場へ戸籍電子証明書を請求する。(居住地以外にも勤務先近くなど最寄りの役所でも可能です)

戸籍電子証明書を請求した市区町村役場からパスワードが発行される。

利用者が発行されたパスワードを”戸籍の提出について求めている行政機関”などに提出する。 

パスワードを提出したことにより、”戸籍の提出について求めている行政機関“が戸籍電子証明書の発行元となるアクセスサーバーへアクセスし”、”戸籍電子証明書の請求および中身を確認する”ことができるようになります。

戸籍の提出先となる行政機関が直接対象者の戸籍電子証明書をダウンロードできる・パスワードを用いて戸籍電子証明書の内容を確認することができるという仕組みとなっています。

すなわち、書面での戸籍を提出する必要がなくなるのです。 

※パスワードの有効期限:3ヶ月 

具体的にどのような手続きで活躍できるのかについては、現在検討中とのこと。

しかし、利用者は、すべてオンラインでの作業で各種申請が済むようになり、行政手続きのハードルが下がることは間違いありません。紙を使用することなく、ペーパーレス化を促進できるという点でもメリットが大きい制度といえます。

今後、あらゆる場面で電子化された戸籍をオンライン上で確認できるようになることが期待されます。ゆくゆくはオンライン上で行政手続き全てを完結できるようになるかもしれません。

 

改正戸籍法施行後も専門家を頼るべき理由

今回、戸籍法が改正されたことにより、戸籍を取得することが簡単になり、自分で揃えることがかなり容易になりました。

具体的に言うと、「戸籍謄本が、全国各地あらゆる場所の本籍地のものであっても、生まれてから死亡するまでの戸籍謄本の一式が、自分の最寄りの市町村役場の窓口に行けば、一括で請求できる」ことになりました。

これにより、これまで相続手続きで掛かってしまっていた手間や時間を大幅に軽減することができるようになります。

相続手続きを専門家に依頼した方がいい理由 

本籍地ではなくても、最寄りの市区町村役場の窓口などで戸籍謄本などを収集できるようにはなりましたが、戸籍の収集における手間が省略できるようになったといっても”相続の手続きについては専門家を頼った方が良い”と言わざるを得ません。

  1. 必要な戸籍が全て自身の判断で揃えられているとは限らない
  2.  兄弟姉妹についての戸籍は、各地に郵送請求などしなければならない
  3. 戸籍取得以外にも、行わなければならない相続手続きが多数ある。(専門家に依頼すれば全てを任せることができる)

繰り返しますが、改正戸籍法による「広域交付制度」を利用することで戸籍取得の一部の手間や時間は大幅に軽減できるでしょう。

しかし、そもそも取得した戸籍に不備や不足がないかを確認し、必要な内容を読み解くには、どうしても専門的な知識が必要となります。

また、戸籍取得については、相続手続きにおいて必要不可欠な「作業」ではありますが、あくまでもそれは手続きの一部分にすぎません。

相続手続きについては「遺産分割協議」や「預貯金口座の解約」、「不動産の名義変更」が重要であり、ポイントとなるのは「いかに円滑に、問題なく相続手続きを終えることができるか」という点です。

さらに、単なる相続手続きでは終わらせずに、二次相続対策や、認知書関連の相続対策といった点についても検討していく必要もあるでしょう。

総合的に考えると、やはり専門家を頼るメリットは今後も大きいと言えます。

 

まとめ

改正戸籍法により、広域交付制度が施行されることになりました。これにより、本籍地でなくても全国各地の市区町村役場の窓口で戸籍謄本などの請求ができるようになります。

しかし、相続手続きにおいて戸籍の取得は手続きの一部に過ぎません。相続手続きで重要なのは「遺産分割協議」や「預貯金口座の解約」、「不動産の名義変更」などです。

書類に不備がないか確認し、必要な内容を読み解くには、どうしても専門的な知識が必要となります。相続手続きが発生した際には、是非一度、あいりん司法書士事務所までお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

あいりん司法書士事務所    梅澤 徹

資格:司法書士・行政書士・宅建取引士

横浜市内の相続専門司法書士事務所で修行したのち独立。不動産が絡む難しい相続手続きが得意。宅地建物取引士資格も保有し、不動産コンサルティングには定評あり。

現在はあいりん司法書士事務所を経営。相続専門5期目として相続業務を幅広く対応。

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