まず初めに、2025年3月に80歳で亡くなられた、
みのもんた氏(本名:御法川法男)のご冥福を心よりお祈りいたします。
この記事を要約すると
- 生前贈与で計画的に財産を贈与することで、将来相続が発生した際の相続財産の総額を減らし、結果として相続税額を軽減できる
- 一般的な生前贈与の手法には、暦年贈与、相続時精算課税制度と不動産評価額圧縮を活用した贈与がある
- 贈与税は累進税率があるので、分割して贈与する暦年贈与が非常に効果的
夏休みの昼間に家族で観ていた「午後は○○おもいッきりテレビ」のおばけコーナーは、多くの視聴者にとって懐かしい思い出です。
あの独特な「みの節」と優しい笑顔に、どれだけ多くの人が癒されたことでしょう。
みのもんた氏の温かい人柄と軽妙なトークが、お茶の間に笑顔を届けてくれました。
そんな、総資産50億円~70億円を築いた昭和・平成のテレビ界の巨人は、晩年に計画的な生前贈与を実施していたことが報道されたことはご存知でしょうか。
アナウンサーから実業家へ転身し、水道メーター会社「ニッコク」の経営で巨万の富を築いた彼の事例は、テレビ業界の方のみならず、現代の高額資産保有者にとって参考となる点が多くあります。
本記事では、みのもんた氏の具体的な生前贈与手法を詳しく解説し、2024年の法改正で変わった7年ルールへの対応策まで、実践的な相続税対策をお伝えします。
あなたも将来の相続税に不安を感じていませんか? みのもんた氏の事例から学べる節税のヒントを、ぜひ参考にしてください。
この記事はこんな方におすすめ
- 高額資産を保有し相続税対策を検討している方
- 生前贈与の具体的な活用法を知りたい方
- 2024年法改正(7年ルール)の影響を理解したい方
- 実業家の節税手法を参考にしたい経営者
目次
みのもんた50億円資産の内訳と生前贈与の実態
アナウンサーから実業家へ転身した資産構築術
みのもんた氏の財産形成の原点は、テレビ司会業と実業の二刀流にありました。
1999年に父から引き継いだ水道メーター会社「ニッコク」は、年商数十億円規模の企業に成長。
全国15支店・8工場を展開し、水道メーター業界で確固たる地位を築きました。
幅広い事業を展開していた方ですが。具体的にどんなことしてたの?と思う方も多いと思いますのでまとめてみました。
主な収入源
- テレビ司会料:全盛期は年収10億円超
- ニッコク株式配当:推定年間数億円
- 不動産賃貸収入:都心物件から月数千万円
- 株式投資収益:愛知時計電機株9億円売却実績
みのもんた氏は「リスク分散」を徹底し、テレビ業界の浮き沈みに左右されない安定した収益基盤を構築していました。こうしてみると本当に様々な分野で分散的に資産を形成されていたことが分かりますよね。
家族3人への想いと計画的な相続対策の準備
では、相続をする実際の家族などはどんな構成だったのでしょうか?
みのもんた氏には実は3人の子供がいます。
- 長女:なみ 47歳 ニッコク取締役、専属スタイリスト
- 長男:隼斗 45歳 TBSプロデューサー、ニッコク社外取締役
- 次男:雄斗 42歳 ニッコク取締役(現社長)
みのもんた氏が相続に対して本格的に準備を始めたのは、2012年のことでした。
この年に愛妻・靖子さんを癌で亡くした後、みのもんた氏は「子どもたちに負担をかけたくない」という想いから、本格的な相続対策を開始しました。
2020年のインタビューでは「もう子どもたちに分けちゃった」と発言しており、段階的な生前贈与が既に相当程度進んでいたことが伺えます。
💡 法定相続人と遺産分割の原則
みのもんた氏の法定相続人は子ども3人のみとなります(民法887条)。
通常であれば、この3人が相続財産を分け合うことになります。
相続の方法としては、遺言書があれば遺言に従い、なければ遺産分割協議または法定相続分(各3分の1ずつ)で分割することが原則です(民法900条)。
しかし、みのもんた氏が注目すべきは、この原則的な相続を待たずに生前贈与を積極的に活用していた点です。この戦略的な生前贈与こそが、相続税対策の核心部分となります。
鎌倉豪邸・不動産・株式で築いた財産の全容
みのもんた氏の総資産は50億円〜70億円にものぼるのですが、その内訳は以下の通りです。
テレビ司会者、会社経営者、不動産投資家という3つの顔を持つみのもんた氏ですが、
どの分野においても一流の実績を残しています。特に注目すべきは、不動産投資家としての手腕です。
その資産規模を見ると、単なる副業レベルではなく、プロの不動産投資家に匹敵する規模であることがよく分かります。
不動産資産(推定35億円)
鎌倉市の自宅豪邸:推定10億円
軽井沢の別荘:推定3億円
渋谷区のヴィンテージマンション:推定5億円
港区の高級マンション(1.5億円物件含む):複数棟で推定15億円
その他投資用不動産:推定2億円
企業関連資産(推定10億円)
ニッコク株式:推定5億円
愛知時計電機株式:9億円(2023年売却済み)
金融資産・その他(推定5億円)
現金・預貯金
有価証券
美術品・骨董品
みのもんた氏はただ、不動産投資をしていたのではなく、
「駅から5分以内」の優良立地にこだわり、値崩れしにくい物件を厳選して投資していました。この選択眼の確かさが、長期にわたる資産形成の成功要因でした。
みのもんた式生前贈与で相続税を劇的に削減する方法
金額が大きいと、その分税金も多いのでは?と思う方がほとんどでしょう。
実はみのもんた氏はそこについても事前に対策をしていました。
以下では実際に彼がどのような対策をしていたのかについて詳しく見ていきましょう。
年110万円基礎控除を活用した長期戦略
みのもんた氏は、暦年贈与(毎年一定額を贈与する方法)による年110万円の基礎控除(相続税法21条の5)を活用していたと報道されています。
Q: 贈与を受け取る人が複数いる場合、年110万円の基礎控除は×3人=330万円まで非課税になるのでしょうか?
A: はい、その通りです。 贈与税の110万円基礎控除は**「贈与を受ける人ごと」**に適用されます(相続税法21条の5)。
つまり、みのもんた氏が子ども3人に各110万円ずつ贈与した場合:
長女への110万円:非課税
長男への110万円:非課税
次男への110万円:非課税
合計330万円が非課税となります
さらに孫8人にも各110万円贈与すれば、年間最大1,210万円(110万円×11人)まで贈与税なしで財産移転が可能です。
これがみのもんた氏が活用していた長期戦略の基本となります。
相続時精算課税で2500万円を無税贈与する手法
色々と制度を活用していたみのもんた氏ですが、彼が活用していた制度は、これだけではありませんでした。
注目すべきは、みのもんた氏が相続時精算課税制度(贈与時ではなく相続時にまとめて課税される制度)も併用していた点です。
2024年の税制改正により、この制度には年110万円の基礎控除が新設され、さらに使い勝手が向上しました。
制度の特徴
制度の特徴で注目するべきは下記の通りです。
- 累計2,500万円まで贈与税なし(相続税法21条の9)
- 2024年から年110万円は相続時の持ち戻し対象外
- 60歳以上の親から18歳以上の子・孫への贈与が対象(相続税法21条の9第5項)
みのもんた氏の活用事例
これをみのもんた氏は下記の様に活用していました。
- 収益物件の早期移転で将来価値上昇分の節税
- ニッコク株式の段階的な承継
- 不動産評価額の圧縮効果との組み合わせ
この制度を使うことで、将来の相続税課税財産から確実に除外できる点が大きなメリットでした。
不動産評価額圧縮で贈与税を80%削減する秘訣
みのもんた氏の生前贈与で最も巧妙だったのが、不動産の評価額圧縮を活用した手法です。
不動産贈与の具体例
実際にこのような事例があります。代表的な3つがこれです。
- 港区マンション(時価1.5億円)を恋人に贈与
- 会社所有から個人所有へ名義変更後に贈与実行
- 評価額を大幅に圧縮して贈与税を軽減
具体的な評価額圧縮のテクニック
- 小規模宅地等の特例(居住用などの土地の評価額を大幅に減額できる制度)活用で80%減額
- 建物の築年数を考慮した減価償却(建物の価値が年数とともに下がることを税務上考慮すること)
- 土地の不整形や利用制限による額:不整形地補正率の適用は慎重な検討が必要(財産評価基本通達20-2参照)
- 共有持分(複数人で不動産を共同所有する権利)での分割贈与
計算例
時価評価額:1億5,000万円
贈与税評価額:3,000万円(80%減額)
贈与税額:約1,000万円(実効税率約6.7%)
通常なら贈与税率45~55%のところを、実効税率10%以下に圧縮することに成功していました。
本当にこんなに圧縮できるの?と思われるかもしれませんが、これらの評価減は財産評価基本通達(昭和39年国税庁告示第48号)に基づく適正な手法です。
みのもんた生前贈与から学ぶ失敗しない節税対策
生前贈与7年ルール改正で変わった最新節税法
2024年の税制改正により、生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました(相続税法19条改正)。
改正のポイント
- 2024年1月1日以降の贈与から適用
- 段階的に加算期間が延長(2031年に完全移行)
- 延長した4年分は100万円控除あり(相続税法19条第3項)
※詳細は国税庁ホームページをご確認ください。 (参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm)
このような法改正がありましたが、みのもんた氏は改正前から長期間にわたる計画的贈与を実施していたため、
この改正の影響を最小限に抑えることができました。
新ルールでの対策法
- より早期からの贈与開始が必要
- 相続時精算課税制度の活用拡大
- 贈与税の特例制度の積極利用
実際のシミュレーション例を挙げると下記の通りです。
【改正前】3年ルールの場合
生前贈与加算額:330万円(110万円×3年)
【改正後】7年ルールの場合
生前贈与加算額:670万円(110万円×7年-100万円控除)
相続税増加額:約270万円(税率40%の場合)
税務調査で指摘される贈与の落とし穴と回避術
ただし、いいことばかりではありません。
みのもんた氏のような高額資産家は、税務調査(税務署が納税者の申告内容を調べること)の対象になりやすいのが現実です。
よくある税務調査のポイント
まず最初に、どういう状況だと調査になるかという所を見てみましょう。
- 名義預金(名義は子や孫でも実質的に親が管理している預金)の疑い:通帳や印鑑の管理状況が重要な判断基準となる(最高裁昭和38年10月11日判決参照)
- 贈与契約書の不備
- 定期贈与(毎年決まった金額を贈与すること。税務上不利になる場合がある)との認定リスク
- 連年贈与として一括課税される可能性(国税不服審判所平成17年12月19日裁決参照)
- 贈与の実態の証明不足
このように、税務調査になるポイントはいくつかあります。ではどのようにして対策すればいいのでしょうか。
みのもんた氏が実践した回避術
- 贈与契約書の作成を毎回実施
- 受贈者の印鑑証明書添付
- 銀行振込による資金移動記録
- 贈与税申告を確実に実施(110万円超の場合)
みのもんた氏は実際にこのような方法で対策をして上手く回避していました。
税務調査対策チェックリスト
税務調査になることもあると思いますので、事前にこのようなチェックリストを準備しておくのもお勧めです。
抜け漏れがあると節税も上手くできないかもしれないので、正しく準備をしておきましょう。
- 贈与契約書を毎年作成している(民法549条の書面化推奨)
- 贈与を受けた側が通帳・印鑑を管理している
- 贈与税申告を適切に行っている(相続税法28条)
- 定期贈与ではなく都度贈与の形を取っている(相基通9-10参照)
- 贈与の事実を証明する資料を保管している
贈与税55%を回避する最適な分割贈与の計算式
生前贈与は累進税率(所得や贈与額が多いほど税率が高くなる仕組み)であるため、一度に多額を贈与すると税率が跳ね上がります。
贈与税の税率表(一般贈与財産)
以下に税率票をまとめておりますので、参考にしてみてくださいね。
基礎控除後の金額 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
※最新の税率は国税庁ホームページでご確認ください。 (参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm)
みのもんた氏の最適化手法である生前贈与において、贈与税率を抑えつつ効率的に財産を移転するためには、分割贈与が効果的です。
具体的な例示
310万円贈与の場合
課税価格:310万円 – 110万円 = 200万円
贈与税額:200万円 × 10% = 20万円
実効税率:20万円 ÷ 310万円 = 6.45%
1,000万円を一括贈与した場合
課税価格:1,000万円 – 110万円 = 890万円
贈与税額:890万円 × 40% – 125万円 = 231万円
実効税率:231万円 ÷ 1,000万円 = 23.1%
年310万円の贈与では実効税率が約6.45%に抑えられ、一括贈与と比較して大幅な節税効果が期待できます。
分割贈与の効果としては、毎年310万円を4年間贈与した場合の総税額は80万円。
一括1,240万円贈与の税額462万円と比較して、382万円の節税効果となります。
これは贈与税の累進税率構造(相続税法21条の7)を活用した合理的な手法です。
生前贈与の持ち戻し(もちもどし:相続時に過去の贈与を相続財産に加算して計算すること)の対象となるのは、将来相続人になる人への贈与に適用されます(相続税法19条参照)。
そのため、相続人でない孫への生前贈与は持ち戻しの対象になりません。
ただし、孫の親が先に死亡していて代襲相続(だいしゅうそうぞく:本来の相続人が先に亡くなった場合、その子が代わって相続すること)が発生していたり、孫が遺言などで財産を取得していたり、相続時精算課税制度による贈与を受けている場合は、
孫に対する生前贈与も持ち戻しの対象となるので注意してください(相続税法21条の9参照)。
今回の税制改正で「相続時精算課税制度」も見直され、2024年1月1日から年間110万円の基礎控除が新設されました。
改正前は、生前贈与は2,500万円まで非課税だが、贈与者が亡くなったときには贈与財産を相続財産に足し戻して計算し、相続税としてまとめて納税する必要がありました。
しかし、改正後は、年間110万円までは相続時の持ち戻しからも除外されるため、確実な節税効果が期待できます。
FAQ(よくある質問)
Q1:なぜ生前贈与は相続税対策に有効なのですか?
A1: 相続税には基礎控除(相続税法15条)があり、これを超える財産に対して課税されます。
高額な資産をお持ちの場合、この基礎控除を超える部分が多くなり、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
生前贈与は、相続が発生する前に計画的に財産を贈与することで、将来相続が発生した際の相続財産の総額を減らし、結果として相続税額を軽減できる有効な手段です。
特に、時間をかけて早期から計画的に行うことで、より大きな節税効果が期待できます。
Q2:どのような生前贈与の手法がありますか?
A2: 一般的な生前贈与の手法としては、主に以下のものがあります。
- 暦年贈与:毎年1月1日から12月31日までの1年間に行った贈与の合計額に対して課税される制度です。
- 相続時精算課税制度:贈与時には一定額まで非課税とし、贈与者が亡くなった相続時に、その贈与財産を相続財産に加えて相続税として精算・納税する制度です。
- 不動産評価額圧縮を活用した贈与:不動産を贈与する際に、税務上の評価額を適正な手法で圧縮することで、贈与税の負担を軽減する手法です
Q3:贈与税は税率が高いと聞きますが、負担を抑える方法はありますか?
A3: 贈与税は累進税率(るいしんぜいりつ)が適用されるため、一度に多額の贈与を行うと税率が非常に高くなります(最大55%)。
税負担を抑えつつ効率的に財産を移転するには、分割して贈与する暦年贈与が非常に効果的です。
Q4:2024年の税制改正(7年ルール)で生前贈与のルールはどう変わりましたか?
A4:2024年1月1日の税制改正により、相続開始前に行われた生前贈与を相続財産に加算して相続税を計算する期間(生前贈与加算期間)が、
従来の3年から7年に延長されました(相続税法19条改正)。
まとめ
みのもんた氏の生前贈与戦略から学べる成功のポイントは以下の3つです。
1. 早期からの計画的実行
相続税対策は時間が最大の武器です。みのもんた氏は50代から本格的な生前贈与を開始し、約30年間継続しました。
複利効果を活用し、小額の贈与でも長期間継続することで大きな節税効果を実現しました。
相続税の基礎控除(相続税法15条)を超える財産がある場合、早期対策が重要となります。
2. 複数制度の組み合わせ活用
暦年贈与、相続時精算課税制度、各種特例制度を戦略的に組み合わせて活用。
単一の手法に頼らず、状況に応じて最適な制度を選択することで節税効果を最大化しました。
3. 適切な記録管理と専門家活用
贈与の実態を証明する記録を確実に残し、税務調査(ぜいむちょうさ:税務署が納税者の申告内容を調べること)に備えました。
また、税理士等の専門家と連携し、法改正にも適切に対応していました。
2024年の法改正により生前贈与を取り巻く環境は変化していますが、基本的な節税原理は不変です。
ただし、過度な租税回避行為には注意が必要です(最高裁平成18年1月24日判決「武富士事件」参照)。
適正な税務処理の範囲内で、合理的な相続税対策を行うことが重要です。
みのもんた氏の手法を参考に、ご自身の状況に合わせたオーダーメイドの相続税対策を検討されることをお勧めします。
※この記事は2025年5月時点の税法に基づいて作成されています。税制改正により内容が変更される可能性がありますので、最新の情報は税務署または税理士にご確認ください。
この記事の監修者
遺産相続の無料相談
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