この記事を要約すると
- 相続登記をしていないと、所有者としての権利は主張できない
- 登記をしていなかったことに対して、過料が科せられるおそれがある
- 長期間相続登記等がされていないことの通知を受け取ったら、すぐに対処する
不動産を相続したら、相続人への名義変更である相続登記をする必要があります。
不動産の権利は、相続人が有しているものの、登記簿上の権利者が自分になっていなければ、第三者に対して所有者の権利を主張できません。
相続登記がされていないままでは、不動産の売却や不動産を担保にした融資も受けられず、賃貸不動産の賃料も受け取れないなどさまざまなデメリットが発生します。場合によっては、過料を科せられるおそれもあるでしょう。
登記は、自分の権利を第三者に対抗するための要件です。つい後回しにしてしまいがちですが、早めに登記を行い、自分の権利を守りましょう。
ここでは、相続登記をしないままにしておくことで起こるデメリットと、相続登記を促すために送られてくる長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)について詳しく紹介します。
相続登記をしなければならない状況の人や、これから相続登記が発生する可能性のある人は、ぜひ参考にしてください。
相続登記をしないとどうなる?
相続登記をしないままにしておくと、さまざまなデメリットが発生します。ここでは、5つのデメリットを紹介します。
第三者に権利を主張できない
相続登記をしないままにしておくと、所有者としての権利は主張できません。
例えば、相続人の1人が遺産分割協議書を偽造して自分名義の登記をし、そのことを知らない人に不動産を売却してしまったら、自分の法定相続分以上の権利は主張できなくなってしまうでしょう。
もちろん、遺産分割協議書を偽造する行為は犯罪であり、偽造して売却をした他の相続人に対しては権利を主張できます。
しかし、そのことを知らない第三者に対してすでに売却されていた場合は、自分の不動産であることの主張はできなくなってしまいます。
不動産を売却できない
相続登記をしないままにしておく大きなデメリットの1つが、不動産を売却できないことです。
不動産の売買において、代金の決済と同時に所有権移転の登記を行うのが一般的です。所有権移転の登記は、登記義務者である登記簿上の所有者と、登記権利者である新たに所有者となる人の共同申請にて行われます。
しかし、売主と所有者の名義が一致していないとなると、代金の決済と同時に行うはずの登記義務が果たせません。登記簿上の所有者でない人が不動産を売却するのは難しいでしょう。
相続不動産を担保にした融資を受けることができない
金融機関などからお金を借りる際、相続不動産を担保として利用できます。その際は、貸付とともに、抵当権の設定登記を申請します。
抵当権の設定があれば、万が一返済が滞ってしまった場合に行われる差し押さえもしやすいです。また、抵当権の登記権利者には、他の一般債権者に優先して配当が受けられます。
金融機関が抵当権の設定登記をしないまま、相続不動産を担保として融資をすることはないでしょう。相続登記をしていないと、相続不動産を担保とした借入はできません。
賃貸不動産の賃料を受け取れない可能性がある
すでに賃貸中の相続不動産だった場合、賃貸借契約は相続人にそのまま引き継がれます。しかし、相続登記をしないままだと、新たな大家となって住人に対して家賃の請求はできません。
新たな大家から賃料の支払先を変更してほしいと連絡が来ても、住人には所有権の移転が本当にされているかどうかがわかりません。所有権移転がされていなかった場合、住人側に賃料の二重支払いのリスクが発生するでしょう。
そのような場合に備えて、住人は登記簿上の所有者に賃料を支払えば免責されるようになっています。
相続の場合、自分の法定相続分に応じた賃料のみは、未登記であっても請求できるとされてますが、実際は非常に難しいでしょう。
過料を支払わなけばならない
長い間、登記をしないことによる過料や罰則等は設けられていませんでした。
相続してから登記までの期限も定められていなかったため、相続より数十年経過してから登記を申請しても、延滞金や加算金などは発生しなかったのです。
しかし、2024年4月1日から相続登記は義務化されました。不動産を取得後、3年以内に相続登記をしないと、10万円以下の過料が課せられます。
また、相続登記の義務化とともに、登記名義人の住所や氏名の変更登記も義務化されました。こちらは、変更した日から2年以内に登記をしないと、5万円以下の過料が課せられます。
ただし、売買や贈与での所有権移転登記などは、未登記不動産以外であれば2024年以降も義務化されず、過料が科せられる心配もありません。
相続した不動産が未登記不動産の場合
上記でも少し触れましたが、不動産の中には登記されていない「未登記不動産」があります。未登記とされる不動産は、以下の2種類です。
- 表題登記はされているものの、権利の登記(所有権保存登記)はされていない
- 表題登記もされておらず、完全に未登記である
このうち、1に関しては、所有権保存登記が義務になっておらず、罰則はありません。一方で2の場合は、所有権を取得してから1ヶ月以内に表題登記を申請しないと、10万円以下の過料を科される場合があります。
これは不動産登記法に定められていますが、実際には表題登記をしなかったことで過料を科せられた例はありません。実際に、表題登記もされていない未登記不動産は全国にたくさん存在しています。
しかし、登記の有無に関係なく、課税の対象になる建物は市町村が独自調査し、きちんと課税されます。また、今まで過料を科せられた例がなかったからといって、今後も変わらず過料を科せられないわけではありません。
表題登記を含め、きちんと登記するようにしましょう。
長期間相続登記等がされていないことの通知が届く可能性がある
長期にわたって相続登記がされていないと、国が不動産の相続登記を促すために、通知を送付します。
これは、社会問題となっている「所有者不明土地」をなくすための対策として行われており、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の一環です。
相続登記がされていない土地をチェックし、その法定相続人を調べて相続登記を促しています。ただし、不動産の中でも土地のみに限られているため、建物のみの相続であった場合は該当しません。
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)が送られてきたら、亡くなった家族名義の土地を相続する人を決めて、早めに相続登記をしましょう。
相続人全員に通知しているわけではない
長期間相続登記等がされていないことの通知(お知らせ)は、相続人全員には通知されません。法定相続人が複数いる場合、その中から1名の方に対して通知されます。
所在地が判明しており、通知を受け取れる可能性が高い人、そして対象となる不動産の所持地に住民票がある法定相続人に通知が届く可能性が高いです。
相続放棄した場合でも届くことがある?
相続放棄の手続きをしていても、まれに書面が届く場合があります。戸籍謄本には、相続放棄の有無について、情報が載っていないため、法定相続人として通知が送られるのです。
相続放棄しているにも関わらず通知書が届いたら、通知書に記載されている管轄の法務局に連絡を入れましょう。その際に相続放棄をしている旨を伝えれば、適切に対処してもらえます。
まとめ
相続登記は、今まで義務化されておらず、行政上のペナルティである過料も適用されていませんでした。
しかし、2024年4月1日からは相続登記の申請が義務化されたため、不動産を取得した相続人は所有権の取得を知った日より3年以内に相続登記をしなくてはなりません。
正当な理由なく義務に違反した場合、10万円以下の過料が科せられるおそれがあります。今まではペナルティがなかったため、相続登記はつい後回しにしがちです。
義務化されていること、ペナルティを受けるおそれがあることを理解し、期限となっている3年を経過しないうちに申請しましょう。
当事務所でも、相続登記に関する相談に対応が可能です。
まずは状況を確認し、どのように手続きを進めていくべきか、何か問題となっていることはないかなどをチェックしたうえで、適切な対応方法を提案しています。
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この記事の監修者
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