遺言執行者が指定されている場合と、指定されていない場合の登記手続き
ある遺言には甲の相続財産を乙に遺贈すると定めていました。この場合に遺言執行者がいるかいないかで手続きに差が生じます。遺贈による所有権移転登記の申請は、遺言執行者が専任されているときは受遺者と遺言執行者が共同で行います。
遺言執行者が選任されていないときは受遺者と遺言者の法定相続人全員が共同して行い、この点で違いがあります。
遺贈する土地が農地の場合、特定遺贈は受遺者が遺贈者の相続人以外のものであれば、農地法の許可が必要ですが、相続人に遺贈する場合には許可は特に不要です。
遺言執行者の指定
遺言執行者は必ず定めなければいけないものではありません。遺言執行者は、指定遺言執行者という形式と選定遺言執行者という形式があります。
遺贈による登記の申請人
遺贈による登記の申請は、受遺者と遺言執行者とで共同して行います。包括遺贈であっても特定遺贈であっても共同申請で行います。また、遺言執行者はあくまでも相続人の代理人とみなされます。遺言執行者がいない場合は受遺者と遺贈者の法定相続人が共同して行います。
また遺言書の記載によって登記原因が遺贈か相続になります。下記にそれぞれ掲げます。
「遺贈」になるケース:
「相続人と相続人ではない者に包括遺贈する」「相続人の全員に対して格別に、遺贈する」「受遺者に遺贈する」「相続人中の一部のものに包括遺贈する」「相続人以外のものに、全部を遺贈する」などです。
「相続」になるケース:
「相続人全員に財産全部を包括遺贈する」「相続人が2人の場合に、長男に甲不動産、弟に乙不動産を相続させる」などです。
登記申請書記載のポイント
登記の目的;所有権移転
原 因:令和年月日 遺贈
権 利 者:甲
義 務 者:亡乙
添付書類:登記原因証明情報、登記識別情報、印鑑証明書、住所証明書
代理権限証明情報
登録免許税は1000分の20です。登記原因証明情報について、遺贈の内容を報告する形式の登記原因証明情報では足りません。公正証書遺言書か家庭裁判所の検認をうけた遺言書、および、遺言者の死亡を証明する書面が登記原因証明情報になります。
なお、遺言執行者が選任されていない場合は下記のようになります。
登記の目的:所有権移転
原 因:令和年月日 遺贈
権 利 者:甲
義 務 者:亡乙 相続人丙
添付書類:登記原因証明情報、登記識別情報、印鑑証明書、住所証明書
代理権限証明情報
以上です。遺言にて遺言執行者が選任されているか否かによってなすべき登記が変化していきます。遺言に関する登記でお困りの方は当事務所にお気軽にご相談ください。